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           《落選編 3:『背水の陣』》

 背水の陣とはこの頃の私のことをいうのだろう。補欠選挙の落選が決まって来年7月の本選挙まで9ヶ月近くある。蓄えは底をつき、失業給付も終わった。政治活動を続けながら、家族の食い扶持も確保しなければならない。

 女房は言った。あなたは普通のギャンブル(パチンコとか競馬とか)はしないかわりに自分に賭けている。家族はその度に振り回される…まったくその通りで耳が痛い。でも、勝算のない賭けではない。熟慮の上での決断である。

 無論、自分が最後に守るべきものは家族だと心に決めている。だからこそ家族の必要を満たしながら、自分という素材を使って世の中にも最大限に貢献できる方法として市議になることを選んだのだ。

 でもそれは、結果が出なければ絵に描いた餅である。実際の話、明日からの家計をどうするという現実がある。数ヵ月後に選挙に出るという中高年の男を使ってくれる企業はない。短期のアルバイトを続けながらしのぐしかない。

 サラリーマン時代は、バブルの絶頂期で800万、最近では600万くらいの年収があった。一日、何もしなくても一日1〜2万円の収入が保証されていたが、今は何もしなければ確実にO円だ。否、出費はあるので日々マイナスとなる。

 これだから仕事を辞めてまで、政治家になろうという酔狂な人はそういない。ともあれ、仕事を探さなければならない。それも政治活動や市民活動の片手間にできる仕事でなければならない。でも、世の中そんなに甘くないだろう…

 他にもある。ちょうど来年度(15年度)は、住んでいる若葉台自治会の輪番制で組長が当たっている。回覧を回したり組長会議などに毎月参加しなければならない。20軒ばかりの世話役だが、私にとっては地域デビューとなる。

 また、まん中の男の子が来年中三である。中学校PTAの若葉台の来年度地区長になってほしいと頼まれていた。さらに、落選が決まって2〜3日後。下の娘が通う小学校のPTA会長が家に来て、ぜひ来年度のPTA会長にと拝まれた。

 すでに長女の通う高校のPTAでは地区委員長が確定していたので、これで小中高のPTAに関わることとなる。さらに、知人の元青年会議所理事長からは来年度の市子ども会育成協議会の副会長になってほしいと懇願された。

 その他に、来年2月に、わらび座という劇団の可児公演を可児市文化創造センターの主劇場で開催するための『100人委員会』というものをつくることになり、その事務局長をやることになった。

 節操もなく、何でも請けてしまった感がなきにしもあらずだが、ほとんど地域に顔がなかった自分としては渡りに舟といえなくもない。実際、PTAも自治会もこれまでに経験がないので、いい経験だと思う。

 普通は地域の活動を経験したあとで、NPOや市民活動に入ってゆくケースが多いのだろうが私は全く逆だ。大阪ボランティア協会で洗礼を受けて以来、市民活動やNPOを推進してきた。それがずっぽりと地縁活動につかることになった。

 ともあれ、こうして政治活動をしながら家族を養ってゆくための経済活動と、自治会PTAなどの地縁活動、それとこれまでのNPO・市民活動。すべてを同時に進行しなければならなくなった。しかも、どれも手を抜けない。

 本当にこれだけのことを同時こなせるのだろうか?不安がよぎる。どれも中途半端になって元も子も失うことになりはしないか。でも、これはすべて自分で選んだことだ。やり遂げるしかない。これで次回も落選ならもうほとんど立ち直れないかもしれない。これまでの私の人生で一番不安定な9ヶ月が始まった。

                           次号につづく…

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