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≪選挙編5≫

 これはいけるかもしれない!もちろん、選挙に出る限りは当選することを目指すのは当然である。だが、客観的な状況を比べる限り、はるかに相手方の方が有利だった。でも、ここに来て、少しだけ光明が見えてきた気がした。

 相手というのは二人いて、ひとりは53歳の地元企業を退職された元会社役員の方。もうひとりが43歳、現在は国務大臣を務める地元有力代議士の政策秘書まで務めた方で、可児を地盤とする方である。

 2002年10月27日、本来は市長選があるわけだった。しかし、現役市長が早々に無投票で三選を決めてしまったために、ひとり欠員が生じていた市議会議員の補欠選挙だけが行われようとしていた。

 元代議士秘書の方は、16年間その仕事を務めて来たという。それも地元に張り付いた仕事が長いという。いわば、選挙のプロだ。対する私は知名度も、お金も親戚・縁者もなく、2ヶ月前から動き出したにすぎない。 

 従来の常識に従えば、相撲でいえばまるで横綱と幕下以上の差がある。それでも、隣の長野県では田中知事が、保守派に圧勝するなど地方でも今までの常識を破るようなことが起きつつあった。

 1週間にわたる選挙選も終盤にさしかかってきた。だんだんに、市民の反応がよくなっていくのが分かる。街頭演説をしていても足を止める人や、わざわざ家から出てきて聴いてくれる方が、少しづつ増えてきた。

 田園地帯を回っても、野良仕事をしている方の反応がとてもいい。思わず駆け寄って握手をすると満面の笑みで励ましてくれる。「がんばりゃーよ」そんな出会いがいくつもあると「これはいけるかも!」という気になる。

 夕方など、ある大型スーパーの駐車場出口付近に立っていると、相当の数の車に乗っている人たちの注目を集めることができた。あいさつを返してきたり、手を振ってくれる人も日増しに増えている感じがした。

 ひとつには週の半ばに、可児市の3万数千世帯に配布された「選挙公報」の威力かもしれない。それぞれの政策やスタンス、顔写真などをA3版の紙に三人並べて掲載された。選挙公報は可児市では、初めての実施である。

 実はこの選挙公報があるから、知名度のまったくないと言っても過言でない自分にもチャンスがあるのではないかと思い、立候補を決意した…という経緯がある。全市民に自分の思うところを伝えることができるのだ。

 今までの市民活動の中で、イベントの案内や自分の思いなどをいろんな方法で人に伝えてきた。新聞やTVなどマスメディアに取り上げてもらったこともある。でも、そのメッセージを受け取る人は社会全体のごく一部である。

 いかに投票率が落ちてこようとも、選挙には多くの人の関心が集まる。本気で社会を変えようという気があるなら、その一番効果的な方法として選挙に出て政治家になるという選択肢はあっていいと思う。

 10月26日、選挙戦最終日。午後8時、マイク収めといって最後の街頭演説は自宅の前でやった。静かな住宅街、夜にもかかわらず近所の人たちが出て来て励ましてくれた。ああ、終わったんだ…やり終えた安堵感と不安が交錯する。

 こうして私の最初の選挙運動は終わった。本当は最後の最後まで、できることはあるんだけど、もう限界だった。やれることはやったという思いもあった。でも、この辺りが甘いところであった…明日は投票日、そして開票の日でもある。

                         …次号につづく


 

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