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 市民ライターのキモ 〜 その真実と技術
                             

(1) 市民ライターの時代がやってきた
                                    吐山継彦

●インターネットというデジタルなメディアは、今までとはまったくちがう文章流通の流れをつくったと思う。ホームページとメールマガジンが無数の「市民ライター」たちを産み出しつつある。そして、モノを書く市民たちの多くが、今やインターネットを自家薬籠中のメディアとして、さまざまな社会的発信をし始めている。

●コピー機もファックスもなかった時代に、フツーの市民が安価に使える情報発信の手段はガリ版(謄写版印刷)しかなかった。しかし、ガリ版印刷はある程度の熟練と時間を要する上、多くの枚数を謄写版で印刷すると、原紙の蝋が熱で溶けるため、最後のほうは字が滲んでしまってだんだん読めなくなる。一枚の原紙で印刷できる枚数は限られていた。

●その後、コピー機とワープロが急速に発達し、簡単な印刷物はワープロで書いたものをコピー機で複写することが多くなったが、この方法は部数があまり多いと、金額的に馬鹿にならないのが欠点だった。

●…で、ホームページとメールマガジンである。ホームページはある程度、技術やデザイン的なセンスが必要だが、メールマガジンはワープロさえ使えたら誰でも作れる。しかし何と言っても、メールマガジンの最大のメリットは、デジタルの文字情報を配信スタンド(メールマガジン配信会社)を通じて、購読申込みをした人に無料で発信することができる点だろう。

●配信コスト・ゼロというのは今までのメディアには無かった重要なポイントだ。紙媒体は郵便代がかかることが大きなデメリットだし、ホームページは作っても誰にも見に来てもらえなかったら意味がない。つまり、メールマガジンという媒体は、配信の手間とコストがかからない上、購読申込みをした確実な読者に届けることができるという画期的なメディアなのである。

●そして重要なのは、HPとMMの存在が膨大な市民ライター群を生み出しているという事実だ。「日本中にこれだけモノを書く人がいたのか!」と感心するほど、さまざまな人たちがさまざまな文章を書いて情報発信している。メールマガジンの中には、個人発行で毎日3万部以上配信しているようなオバケMMもある。こんなことを印刷媒体でやろうと思えば、とてつもないコストと時間がかかるので絶対に不可能だ。

●ジャーナリストの手による優れた情勢分析モノから、エンターテイメント系まで、今や個人発のメールマガジンは大盛況である。完全に一つのメディア・ジャンルを形成していると言えよう。個人が本当に質のいい文章を書き、その内容と情報が独自なものであれば、万単位の読者に受け容れられるメディアが登場したことの意味はいくら強調しても強調しすぎることはない。また、発信しさえすれば、どこかで読んでくれる人がおり、もし内容的に充実しているなら、必ず評価する人がいてくれる。

●メールマガジンやホームページの数は世界中で毎日増え続けている。この膨大な市民ライターの群れの中から、何か新しいことが起きるのはむしろ当然のような気がする。新しい文体、新しい思想、新しいライフスタイル、新しいビジネス。裾野が広ければ広いほど、高い山である可能性が大きいのは当然だから、この市民ライターの巨大な群れに大きな期待をかけてもいいのではないだろうか。
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