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      ≪選挙編4≫

 候補者はいったん選挙カーに乗ってしまえば、他の事は何もできなくなる。このことは、結婚式の披露宴での新郎の境遇に似ていると思った。むろん何もかもがおまかせの披露宴や、みこしに乗った選挙ではない。

 もう20年前になるが、私の場合披露宴のスケジュールから、司会やアトラクションのお願い、流す曲などほとんど二人で筋書きをつくった。当日は予定通り進むことを信じて、新郎新婦席でニコニコしていることしかできない。

 今回の選挙も自分が主役でありながら、筋書きをつくり、あらゆる人にお願いをして調整する。しかし、どたんばになったら来てくれた皆にお任せするしかない。ともかく選挙カーに乗ったら、良き候補者を演じきるしかないのだ。

 すでに選挙戦二日目の夕方頃から息切れしてきた。選挙カーに乗り込む人の調整やら弁当の手配、ムードづくり、さらに2000枚のはがき書きや電話作戦など、候補者以外に全体を見られる人がいなければ回らない。

 自分がもう一人ほしい!それが正直な気持ちだが、叶うはずもない。かといって、ここ1ヶ月ほどの間に集まって来ていただいた方に、全体的な統括までは望めない。市民派選挙は初めての方ばかりなのだ。

 選挙戦三日目の午後。そんな追い詰められた状況の中で、彼らはやってきた。以前大阪で一緒に活動していた仲間たちである。地獄で仏とはこういうことを言うのだと心底思った。

 彼らとは、私がまだ大阪にいた97年、京都で温暖化防止京都会議(COP3)があったが、その時一緒にこの会議の啓発イベントなどを手掛けた連中が、その仲間を引き連れて来てくれたのだ。

 リーダー格のN君は、当時は関西学院大の学生だったが、今は、慶応義塾大の大学院に在籍し、全国の大学の環境サークルなどをネットワークしているエコ・リーグの全国代表を務めていた。

 しかもN君は、何度か選挙運動の経験があり、全く初めての土地だというのに、街宣コースの計画から人の配置まで、地元の応援者と調整しながらまたたく間にスケジュールをつくってくれた。

 何年か前に、N君らは大阪から5人ほどで自転車で来たことがある。その時、突然だったのだが自宅に泊まってもらったことがある。そんなことにも恩義を感じて来てくれたのだろう。

 やはり大切にすべきは人の縁。どこでどうつながってゆくか分からない。学生たちの多くは、選挙戦最終日まで泊り込んで応援してくれた。彼らが来てくれたことで一気に賑やかになった。

 ともあれ大阪や京都、東京から学生が全部で10人近く来てくれて、選挙事務所の平均年齢はいきなり30歳ほど若返った。閉店した寿司屋さんを事務所にしていたが、2階の座敷はさながら合宿所のようになった。

 女子大生も三人来てくれたので選挙カーからのアナウンスも他の陣営とはまったく違ったものになった。おそらく可児市で親類縁者以外で学生達がこんなに動いたことはないので、かなりインパクトはあったと思う。

 彼らの柔軟な発想で、市内目抜き通りをパレードしたり、選挙カーを子どもにもうけるようにデコレーションしたり、楽しみながら選挙運動を展開することができた。これは、もしかしたらいけるんじゃないか…そんな手ごたえさえ感じるようになってきた。

…次号につづく
(山根)


 

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