テーマ《 みかん 》 14号(04-11-20)掲載 その1/4
みかん・ミカン・蜜柑
かざり
雪国で育った私の子ども時分、蜜柑はいつもまだ見ぬ国への憧れに通じていました。手回しの蓄音機で、鞠と殿様(西条八十作詩 中山晋平作曲)のレコードを何度聞いたことか。てんてんと弾んでいった鞠は、ついに殿様のお駕篭のうえまでとんでいって、殿様のお膝に抱かれて東海道を上ります。たどり着いたところが陽の光あふれるという紀州。(大雪の中でお正月を迎える私にしたら、キシュウはシンデレラのお城のようなキラキラしたイメージ)鞠は山の上で蜜柑になってしまいます。
うっとりしながら聞いたものでした。
だから、とうぜん蜜柑の味も大好き。暮れに、箱に入った蜜柑が届くと、子ども心にうれしかったものです。食べるのはいつでもひとり一個ずつ。大家族だったし、あの頃、雪国ではやはり蜜柑は貴重品でした。
まず、重さと形に納得し、次は苦労してツメで固いヘタを取ると、袋の数をきょうだいで当てッコしたり。それからおもむろに食べました。寒い座敷から取ってきた蜜柑は冷たくておいしいのに、祖母は丸ごとストーブに乗せました。
部屋中に蜜柑の皮が焼ける匂いが漂って、皮が焦げてきます。それから祖母は皮をむいていました。ぬくもっておいしい、なんて言って。
蜜柑の皮の色はお日さまの色。50年も前のことを思い出しています。
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