テーマ《 十三(じゅうそう) 》 13号(04-10-20)掲載 その3/3
不思議な町・十三
かざり
十三のとなり町に住むことが決まったとき、つまり今から30年ばかり前のこと。会社の同僚たちは「何でそんなところに住むねん」と口をそろえて言いました。田舎から出てきて間がない私には、十三がどんなところかまったくわかりませんでしたから。
結婚して、一緒に住んだ夫の母は「その用事、十三やったらウチが行く」と言って私を止めました。区役所、保健所、電話局、などの“役所”は、たいがい十三にありました。
まもなく夫の母は名前を変えて仏壇の中に入ってしまいました。私が幼い子どもと新設の図書館に通い始めた頃には、物珍しくてついでにまち巡りをして歩いたものです。図書館は、いくつものきらびやかなホテルのむこう。夕方、電車の窓から橋のむこうに見えるホテル群は、図書館のあたりです。「あんなホテルにいっぺん泊まりたいなー」あこがれるような声で、彼は何度つぶやいていたことか。
藤田まことが「十三のね〜ちゃんー♪」の歌をはやらせた時はほんとうにイヤでした。せっかくいいイメージになりかけていた私の十三が、またグ〜ンと後退。ヤクザの抗争による発砲事件があったりすると、ますます足も遠のきました。
でも、人間て変わるものですね。
この10年、多くの人たちと関わっているうちに十三を避けてる場合ではなくなってきたんです。好き嫌いなんてエエカゲンなもんですね。親しくなると「好き」に変わるのは人も街も同じ!「ヤヤコシイ街」が「たのしい街」になるんです。私自身、気が付くとよその人に一生懸命になって十三の良さを宣伝する側に立っていました。誰かに出会える、何かに出会える、「エエトコ」なんですよ。
見ているだけでは絶対わからないでしょう。いろんなものが溢れていて、活気に満ちている十三に来て、人とふれあってみてください。「顔の見えるまち」づくりに真剣に取り組んでいるすばらしい人たちがいっぱいいるんですから。そして、ぜひ、声をかけてください。オモロイことが始まろうとしていますから。
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