テーマ《 読書感想文の思い出 》 11号(04-08-20)掲載 その1/3
書こうという意志
本河知明
小さい頃から本を読むのは好きだった。でも、読書感想文は苦手だった。思い出は?と訊かれても、何の本について書いたのかすら、覚えていない。と言うか、本当に書いたことがあるのかすら、記憶が覚束ない。
読書感想文以上に苦手だったのが、国語の試験。答えが論理的に唯一つ導かれる理系科目が得意だった私は、解釈に「答え」を要求する国語の試験に納得がいかなかった。
作品の原作者が、その「答え」を本当に期待しているのなら、まだ納得がいく。しかし、試験の出題者(模範解答を作る人)の解釈が、作者の意図どおりであると、どうして言えるのか?
作家の宮本輝氏は、『彗星物語』という小説の中で、登場人物の少年の言葉を通して、自身の別作品を題材にした国語試験に疑問を投げかけている。きっと、実際に読者から「この模範解答は正しいのか」という内容の手紙があったのだろう。
その点、読書感想文や作文は、自分の好きなように書けるので、まだマシかもしれない。文章の上手、下手はあっても、模範解答があるわけではない。だが、日常の学校の授業が、模範解答を期待されるものばかりなのに、そんな簡単に独創的な文章が書けるわけがない。
そして何より、課題として「書け!」と言われても、自分が書く気にならなければ、なかなか筆(パソコン入力?)が進まない。少年時代は読書感想文の類が嫌いだったのに、いま、こうして文章を書くようになったのは、モチベーションの差が大きい。書こうという意志、それがまずは肝心だ。
(本河知明)
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