三反農家の米作りノート ◇◆◇◆◇
(6) モグラと田んぼの危ない関係
前号で畔の草刈を報告して以来、ほぼ一か月、実は農作業らしい農作業はしていない。
8月後半からは豪雨や台風が続いたので、田への水入れもほとんど必要がなかった。もちろん先月に草刈をした畔の雑草は伸び放題になっていて、すでに膝近くの高さまで成長している。作業がなかったと言うよりは、単に先延ばしにしていただけ。
ようやく秋晴れの天気となって水入れを再開したら、何時間入れても、田に水が一杯にならない。草を踏み分けて畔を歩くと、あちこちで水が穴へと吸い込まれ、下の田で湧き出ている。わたしが農作業をさぼっている間に、せっせと働いていたのはモグラだった。
水田の土はもぐらの好物のミミズの宝庫だが、田に水が張られている間は、モグラは手を出せない。無謀にトンネルを掘り進むと溺死の憂き目に遭う。ところが7月下旬に「中乾し」といって、水田から水を抜いて土を乾かす時期がある。この時期に稲への水分供給を絶つことで、稲の株分かれが止まって穂が出る有効な株だけが成長する。根が更に地中へとしっかり伸びる。
畑や畔で待機していたモグラにとっては千載一遇のチャンスなんだろう。これまで近付けなかった畔際のウォーターフロントに沿ってぐんぐん掘り進み、そして田の中にまでトンネルを延長させている。今年はその後も雨まかせにしていたから、モグラの活動可能期間も長かったのかも知れない。
このモグラ穴を探してすべて塞ぐのはなかなか難しく、今も水漏れが続いている。そろそろ田から水を落として乾かし始める時期なので、大きな水漏れ穴以外は探すのは諦めた。田から水を落とせば、どうせまたモグラが大挙して田へと侵入する。今年はとりあえずはモグラの勝ちにしておく。
モグラは見た目が可愛いし、アングラ文化のシンボルとしての愛着もある。捕獲したり、薬殺したりはしたくない。しかし、付近で耕作を止めた農地が市民農園となって、ずいぶんモグラが増えてきた。あまり繁殖されて畔の土手を穴だらけにされても困る。大雨が振れば土砂崩れになる。環境に見合う適切な個体数に淘汰されてくれなくては困る。
これまで、乾電池で震動するモグラ駆除装置だとか、正露丸によくにた変なにおいの忌避材とかを買い込んで試してみたが、その時は効果があったものの、根気勝負でことごとくモグラに敗退している。そこで来年に向けてモグラ対策の新しい作戦をたてた。
テレビのニュースでモグラ忌避のために植えた畔の彼岸花が満開となって、あちこちで観光名所になっているらしい。見た目もきれい。
「よし!俺も彼岸花を植えよう!」
早速、所有者不明の空き地の彼岸花を掘りに行こうとしたら、家族に止められた。人に咎められたらみっともないと言う。しかし、彼岸花の球根って園芸店では売ってない。ようやくインターネットで球根を見付けて100球買い込み、先日それが届いた。
前号からの作業時間(8月19日から)
田への水入れ、モグラ穴探し: 1時間×2日
草刈3時間、彼岸花の球根植え2時間(実は昨日と今日の作業です)
(9月19日 平田)
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