三反農家の米作りノート ◇◆◇◆◇
(2) レンゲ畑の効能
前回、初めて播種したレンゲが満開になったと報告した。
レンゲ畑と聞いて懐かしい風景が浮かんだ人は、たぶん、もうそこそこのお歳。かっては春の田んぼには一面にレンゲが自生していて、花の咲く時期の畦道は子供のよい遊び場だった。今ではいつの間にかレンゲはほぼ根絶されて、背の高いイネ科の雑草ばかりになっている。
考えられる要因は、ひとつは除草剤。水稲用の除草剤は広葉系の雑草にはよく効くが、イネ科の雑草にはあまり効かない。おのずとイネ科の雑草が生き残る。もうひとつの要因はトラクターでの耕耘。人力や牛馬による耕耘では生き残れたレンゲ草も、トラクターで毎年、成長期に掘り起こされるととても生き残れなかったようだ。
そのレンゲ畑の効能だが、豆科の植物は根中の菌が空気中の窒素を固着して根に蓄え、鋤き込んだ地上部分は良質な有機肥料となる。これは昔に学校の理科で習った知識。農協の指導では、水田一反(10アール)に必要な施肥量は窒素分9キロ(水稲用の配合化学肥料で70キロ分)と言われていて、冬場にレンゲ栽培をした場合はそれを例年の半分程度にしなさいとなっている。すなわち、レンゲは配合肥料35キロ分程度の働きをする有機肥料となる。
秋にレンゲを播くと、冬の圃場の保守の仕方も変わる。本来であれば、稲刈り後は田に排水溝を掘って排水を確保しておき、その後は、年が明けた頃に「寒の田耕し」、トラクターで切り藁を鋤き込み、土の中に空気を入れる。更に、雑草の伸長をみて4月頃にもう一度トラクターで耕して雑草をとる。ところが、レンゲを播くと、年内に人力で排水溝を掘って以降はトラクターを田には入れない。冬場は何もしない。稲刈りの後そのまま放置してある切り藁は、冬場はレンゲの保温のマルチとなり、レンゲが伸びて田を覆うようになると自然に腐って肥料となる。しかもレンゲ優勢で他の雑草は生えない。
化学肥料を減らす、代かきまで耕耘は不要、切り藁の野焼きは不要、雑草も生えない、しかも見た目が美しい。「いいことばかり」の説明に、きっと「落とし穴」もあるはずと少なからず疑いを抱きながら、実はその「おいしい話し」に乗ってレンゲを播種した。
6月早々の田植えを前にして、最初の見込み違いに遭遇している。さあレンゲを鋤き込もうと思い立った頃から雨ばかり続いて作業に入れない。水の溜った圃場にトラクターを入れると田に高低差が出来て後が大変、かと言ってあまり遅くなって、田植えの直前に生の草を鋤き込むと病虫害が出やすいと聞いている。この週末、晴れてくれるだろうか? 天気予報のたびに、落胆する毎日が続いている。レンゲが咲いたと喜んでいる間に、どうもすっかり遅れをとってしまったようだ。
前号からの農作業時間(米関連のみ)
畦の草刈:8時間(のべ3日)、
苗代作り(苗は農協から購入):5時間(のべ2日)
(5月13日 平田)
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