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□ 花井 紀子さん(フリースクールフォロ代表)
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 「いろんな学び方、育ち方があってもいい」
  ―学校に行かなくちゃいけない?(不登校の子ども達)―

私は、大阪市内でNPO法人フォロ(フリースクール)を親の人たちと共に開いています。会員は、小学3年生から18歳までの学校に行けない・行かない子ども達30人。カリキュラムは決まっていません。子ども自身がやりたい事や行きたい所を考え、自分達でやる。来たい時に来れる「居場所」ですね。
 不登校になる子には、繊細とか自己表現が下手とか何か傾向があると考えがちですが、そんなことはありません。虐めなど理由がはっきりしている場合もありますが、いろんなことが重なっていて本人にも分からないのが普通です。親のせいにされることもありますが母と子の問題とは別のところにある場合が多いです。

 拡大再生産を重視する社会の仕組みの中にあって、経済成長に合った人間に育てていこうとする学校のあり方が、その子に合わないとも考えられます。現在、不登校(年間30日以上欠席)の子は全国で13万人、高校中退の子が12万人もいます。我慢して通っている子もいれると、学校と距離を置きたがっている子はその数倍にのぼるといえます。それに対する国の姿勢は、「学校復帰が大事。早く手を打てば学校に戻れるようになる」と、欠席したら即家庭訪問などの対応で、相変わらず根本をみていません。

 報道のあり方にも問題があります。「不登校は問題であって改善すべきもの。長引くとひきこもりになって、どんどん事態は悪くなる」と不安を煽る報道が多く、家にいることが問題という取り上げ方がされています。その子にとって必要だから学校に行かないで家にいるのに、それを責めて追い込んでしまいます。不登校は治すもの、克服するものだという大人の考え方が問題ですね。
 ほとんどの不登校の子どもは、親の期待を裏切っているという負い目、申し訳ない気持ち、自己否定でいっぱいです。悪いことをしていると周りから思わされているのです。

 周りの大人はどうでしょう。不登校の子どもが「学校へ行きたいけど行けない」と言えば、大人は期待しますから「行きたいのなら行かせてあげたい。行った方がいい。どうしたら行ける?」となります。でも、本当は「行きたくない」と言えないから、子どもはそう言ってるだけなんです。 
 先日、一週間学校を休んだというので、中2の女の子がフリースクールに来ました。大人は、学校に行かなくなった時から問題が始まったと思うでしょう。でもその子にとっては、頑張って学校へ通っていた6年前からずっと悩んで迷って、どうしても行けなくなった今はぎりぎりの状態なんです。心も体も消耗していますから、ゆっくり休んだ方がいい。周りの大人は、何とかしてやろうとすぐ子どもにいろいろ用意してしまうけれど、それはよくない。自分と向き合っていることが大切です。苦しむことをも尊重するしかない。
 切り抜けて行くのは自分。周りの大人は悩める空間と時間を確保して、それを否定しないことです。

 子どもの言っていることが過激でとんちんかんなように聞こえても、子どもの立場からみると大抵筋が通っています。大人は、まず一般常識を疑ってみて、必要なら一緒に考えていく。想像力を働かせて子どもの声に耳を傾ければ、どんな価値観の上にたって、どんな考え方をしているのかわかってくることもあります。感じる心が大切ですね。

 不登校は、何とかしてあげなくちゃという対象じゃない。不安を取り除いたり解決してやったりもできない。その子のもっている命の力を信じるしかないです。『家にいる間に必死でいろいろ考えて、家にいるだけなんだけど、無駄じゃなかったっておもう(中学生)』子どもは自分で切り抜けていく。目に見える変化を大切にしがちだけれど、見えないし本人も気づかないけど、思索していることが凄く大切です。評価されなくても、自分の中で深まったり成長したりしているんだと思います。

 学力・社会性・将来を心配する相談が多いですけれども、不登校の経験を大事なこととして整理していけば、やろうと思った時にはいろいろな道が開けます。学歴についても、今は生涯学習もふえているし、心配は不要だと思います。要は、学校に行かない経験をひけめにしない。子どものことばですけれど、『ただ休んでいるからうちにいるんじゃなくて、私は選んでそこにいたんだ』『自由っていうのは、自分に寄ることで、いつでも、自分の味方をしてあげる。それが自由なら、私は家にいて、何にもしないでいた間、ずっとそれを重ねていたんだなと思う』

 学校に行かなくたって生きていける。もっと、いろんな学び方、育ち方があっていい。いろんな生き方があっていい。子ども達は世の中の常識の矛盾と向き合い、命に沿って生きて行くという本質と格闘しています。それが凄く大事だなと思って、ずっとフリースクールと関っていきたいと願っています。

 (東京シューレに7年間勤務・大阪市内で2001年フォロ設立)


                         文責 近藤

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