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■ 市民ライターどんどん ☆彡
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■ 早瀬 昇さん(大阪ボランティア協会事務局長)
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市民が書くことの意味…論理を詰める
僕が、ボランティアや書く活動に関わるようになったのは、大学入学と同時に参加した「交通遺児を励ます会」がきっかけでした。交通遺児家庭の現状を大阪府や厚生省に働きかけるという社会運動に関わったのですが、そこでの作業の中心は、書くことだったんです。
ボランティアや社会活動は、人がまだ気づいていないことに気づいて始める活動です。多勢に無勢だから、ただ大声で訴えるだけでは世の中は動かない。だから「理屈=論理」が大切になります。話す時には、勢いやその場の雰囲気があるでしょう。論理が弱くてもごまかせる。でも、書くときには、起承転結を考え、整理して書かねばならない。だから僕は書くことでこそ、論理は詰められると思っています。
それに、ボランティア活動って役所や企業に比べたらパワーがない。だから、単にお手伝いするだけじゃなくて制度改革に努力するという展開がなかったら駄目なんです。自分たちで抱えきれないなら、社会を変えていこうと動かなくちゃいけない。
その時に「書くこと」が必要になってくるわけです。言葉なしに始まった活動はないと思います。しかも、話すのは、その時だけですが、文字で書けば、時代や場所、エリアを越えて、多くの人に伝えることができます。
では、主張の明確な文章を書くには、どうしたらいいのでしょう。僕は、タイトルから考えて、演繹的に書き進めることが良いと思います。うにゃうにゃと、現実をつれづれに書き、最後にタイトルを考えるような原稿は、全然訳の分からないものになります。
タイトルを考えた後は、起承転結を構成します。表題が決まっているということは、結論が決まっているということです。<起>は書こうとするテーマに何の関心も持っていない人に、「読んで読んで」と迫る"掴み"の部分。 <承>は議論の前提となる現状であり問題提起ですね。そして<転>の切れ味がいいと論理に奥行きができる。そして<承>の現実から<転>で踏み出し、両者を統合できる新鮮な論理や視点、主張が<結>で書けると、文章がぐっと引き締まるんです。
僕の場合、表題が決まると急に書き出せますが、これを探すまでずっと頭の中で悶々と様々な現実や様々な論理、視点を行ったり来たりという「帰納」的作業が続くことが多いです。 そして表題という言いたいことが見出せそうになったら、その結論に向けて書き進む。ところが、書いてみると論理の甘さや視野の狭さに気づく。そこで書きながら考える。つまり、書くことは論理的に考える不可欠の条件なのです。
その際に、社会的なメッセージを書こうとするときに気をつけないといけないのが用語の使い方。すぐに社会化、都市化、近代化といった「?化」を使おうとしてしまいます。これは麻薬みたいな言葉で、解ったような気になる。できるだけ避けたほうがいい。最後に、切り捨てて削っていけば、いい文章になります。
過剰なのかもしれませんが、僕は、言葉の力を信じています。伝えたいことがある時、書くことで何とか発信したいと思う。それに反響があったりするとますます燃えて、「豚もおだてりゃ木に登る」ですよ。やっぱり残るし全然知らない人が読んでくれたりもする。個々の市民活動は本当に小さいですが、書くことで広がりをもてる。
市民が書く意味が、そこにあります。だから、僕は書き続けているんだと思います。
(1955年大阪生まれ 水瓶座 B型 阪神タイガース、
ビートルズファン 多くのNPO関係理事など多方面で活躍
NHKコメンティター 著書多数)
(インタビュア…ちょん 文責… 近藤)
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