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■ 未来への想像力
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■                    本河知明   ◇◆◇◆◇
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 『学校で、いや、幼稚園でさえ、あなたたち大人は私たち子どもに、世のなかでどうふるまうかを教えてくれます。たとえば、争いをしないこと、話しあいで解決すること、他人を尊重すること、ちらかしたら自分でかたづけること、ほかの生き物をむやみに傷つけないこと、わかちあうこと、そして欲ばらないこと。ならばなぜ、あなたたちは、私たちにするなということをしているんですか。』

 1992年6月11日。この言葉は、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開かれた地球環境サミットでのスピーチの一節。語ったのは、12歳の少女セヴァン・カリス=スズキ。


 2003年3月20日。“それ”は起こりました。

 以前、奴隷売買が認められていた時代がありました。植民地支配が認められていた時代がありました。人種差別が認められていた時代がありました。今やそれらは、完全になくなったとは言えないまでも、認められていません。はたして、戦争が犯罪と見なされる日は来るのでしょうか? 兵器売買が犯罪と見なされる日は来るのでしょうか?

 また彼女はこうも言いました。

 『オゾン層にあいた穴をどうやってふさぐのか、あなたは知らないでしょう。死んだ川にどうやってサケを呼びもどすのか、あなたは知らないでしょう。絶滅した動物をどうやって生きかえらせるのか、あなたは知らないでしょう。そして、今や砂漠となってしまった場所にどうやって森をよみがえらせるのか、あなたは知らないでしょう。どうやって直すのかわからないものを、こわしつづけるのはもうやめてください。』

 戦争は最大の環境破壊だ。


 今日もまた、国内外の嫌なニュースが流れる。

 ちょっと前まで私は、「社会問題のほとんどは、ただ単に“コミュニケーション不足”に起因しているのでは?」と考えていた。今もその考えは変わってはいないのだが、それ以前に、“想像力の欠如”というのがある気がしてきた。もちろん、新たなモノやサービスが次々と生み出されている資本主義社会自体、想像力と創造力の賜物であって、まったく想像力が失われているわけではない。また、ストーカーの類のように過度の想像(妄想?)力が悪い方向に働くこともあったりする。私が言いたい“想像力の欠如”とは、自分にとって不都合なことや、自分が知らないこと、関心のないこと、日常目にしないものなどに対してである。

 かく言う私自身もそう。親元を離れて9年経つが、1日のうちどれほど家族のことを想像しているだろうか? 日常出すゴミがどこでどう処分されているのか、想像しているだろうか? ファーストフード店の豚丼の豚がどこから入荷されているのか、想像しているだろうか? 郵便局や銀行に預貯金したお金がどのように使われているのか、想像しているだろうか? 選挙で選んだ政治家がどのような社会を創っているのか、想像しているだろうか? ・・・

 中でも私が最近最も重要だと感じるのは、“未来への想像力”。現在の行動や選択ひとつひとつが未来にどう影響を与えるのか、私たちはどれほど想像しているだろうか?

 正直なところ、こんな想像力を働かせなくても、生きてはいける。

 しかし、よくよく考えてみてほしい。“現在とは未来に対して独裁的な存在”なのだ。常に、不可避的に。

 問題は、想像しているか/していないか、想像できるか/できないかではなく、想像しようとするか/しようとしないか、である。

 将来、宇宙旅行が日常的に楽しめるようになったときのことを想像してみよう。そのとき、あなたが宇宙から眺める地球は、何色に見えていますか?


※ セヴァン・カリス=スズキの言葉は、ビデオ『セヴァン・カリス=スズキ リオ・サミット「伝説のスピーチ」(1992年)』(著作:ナマケモノ倶楽部)より。また、『あなたが世界を変える日』(発行:学陽書房)でもスピーチの全文を読むことができる。

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