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■ アプローチの仕方…「ももたろう」を聞いて…
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■ りこ ◇◆◇◆◇
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『むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんはやまへしばかりに、おばあさんはかわへせんたくにでかけました……』
同じお話を聞いても反応はひとそれぞれ。AさんとBさんは……
●Aの場合
Aは幼い頃を思い出す。俺のじっちゃんは山で炭をやいていたっけ。ばっちゃんは焼き芋が好きで、屑炭のなかから芋の焼ける匂いがしてた……俺はそんな空気が好きだった。そうだ! Aのイメージは広がる。
【炭焼き老人のもとに『炭焼き体験学習』の依頼がまい込む。現金収入にひかれ、渋るじっちゃんをよそにばっちゃんは乗り気。都会のこどもたちがやってきて穏やかな生活はあっという間に崩れ去る。
孤独・葛藤・対立・憎悪…世代を超えてやがて生まれる共同体意識。自然の厳しさ、温かさ。炭が焼きあがったとき、こどもたちは歓声をあげ、じっちゃは微笑む。あたりには芋の焼ける匂いが…。少しずつ変わっていく人間関係を通して、本当の幸せを探ってみよう!】
Aは湧きあがる構想に興奮しながら、執筆活動に励むのだった。次期芥川賞も夢ではない!タイトルは『ガキに炭火』!
●Bの場合
市民活動にも興味のあるBはどうも気になる。「かわでせんたく…川の汚染は?」「むかしっていつ?あるところってどこ?おじいさんとおばあさんはいくつ?家族は?川ってどんな?せんたくの頻度は?」そもそもこの話は史実か虚構か?『〜らしい』『〜みたい』では納得できない。ネットや文献で調べ、岡山、香川に足を運び調査やインタビューを開始する。このフットワーク!
女木島・鬼が島洞窟・吉備津宮縁起。崇神天皇のころ百済の王子温羅が空から下った?えっ!大和朝廷は孝霊天皇の皇子イサセリヒコノミコトを派遣し温羅を討伐してしまった?温羅一族の製鉄技術。『鬼の成敗』は大和朝廷の陰謀か?有力な日韓同祖説……。
山梨にだって大月ももたろう伝説がある? 鬼が投げた?石の杖。犬嶋神社、鳥沢町、猿橋街…。
Bは新しい情報を得て問題点に気づき、社会に情報発信する。
【……このように、『ももたろう』ひとつとってみても様々な説があり、学術的な解明はまだまだである。神社や寺や個人の家にも、価値のわからないまま古文書や掛軸などがもっと放置されていると思う。たかが「むかしばなし」と侮るなかれ。研究解明すれば、多くの史実が隠されている可能性は大きい。
開発などで貴重な遺跡や文献が散逸、消失することがないように、国や都道府県の関係者は、昔話にも着目し、早急に専門家による調査・研究を進め、各地に残る文化的・歴史的遺産の掘り起こし・保護をおこなって欲しい。日本史の謎の解明を期待している。】
ひとつの事象に対するアプローチの仕方はさまざまである。AなのかBなのか、それともC、D……常に問題意識を持っていないとピントがずれる。感動させるのか説得するのか。Bさんには、「具体的な地名や人名、年代・数量など数字をあげればもっと説得力はあがるよ」とアドヴァイスしよう。Aさんには、熟慮の上でと一言。
「それはそうと、AさんBさんって誰?」それは言えません。個人情報は極秘!
(りこ)
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