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■ “自分たちのまちのことは、自分たちで考えて決める”ということ
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■                      本河知明   ◇◆◇◆◇
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 『バークレー 市民がつくる町』(販売:(有)マブイ・シネコープ)というドキュメンタリービデオがある。バークレーは米国・カリフォルニア州にある、人口10万人程度の市。2001年9月11日の事件後、米国によるアフガン攻撃に対して、全米で唯一、反対決議を行った市議会を持つ。

 バークレーの市議会はたいへん興味深い。と言うか、日本の議会とはあまりにも性格が違いすぎて、目から鱗。驚きの事実ばかりだ。

 バークレー市議会は、市民が参加しやすいように平日の夜に開かれる。議会はまず「パブリックコメント」から始まる。このとき市民は、議題にないテーマであっても自由に3分間発言できる。発言者数は毎回10名。応募者から抽選だ。小学生が発言することも珍しくない。行政が出した議題についてアリバイ的(?)に意見募集をする日本の「パブリックコメント」とは、理念的に大きく異なる。

 もう一つ興味深い点は、議場の作り方。市長と市議8名の席はすべて、傍聴する市民と向かいあう形になっている。市議は正に市民に向かって発言する。議員の背中を静かに見守るだけの、日本の議会の傍聴とは、これも大違いだ。そもそも、主権者たる市民(国民)が“傍聴=傍らで聞く”という日本語自体、不思議な気がするが…。

 バークレーに限らず、米国の市議は基本的にボランティア。わずかな給料はあるが、それだけでは生活できないレベルだから、昼間はたいてい本業の仕事を持っている。おまけに、市議の数は非常に少ない。それでも議会が機能するのは、多くの市民参加のおかげ。

 上で紹介したような制度的な仕掛けがあるのも大きいが、それよりもまず「住民自治」についての認識が日本とはまったく異なっている。

 私もつい一月前に知ったことだが、米国には“自治体(市町村)がない”地域がたくさんある。地域住民が住民投票で作るという意思決定を行ってはじめて、自治体ができる。ちょっと極端に言えば、NPOを作るのと同じ感覚。だから、どのような行政サービスを行うかも、自治体によって当然異なる。

 振り返って、日本。

 こちらの地方議員は、お金も時間もタップリ。かなり高額の給料をもらってる上に、議会開催日はそう多くない。それにもかかわらず、議員の中には、役人に質問内容をもらっている人が少なからずいると聞く。つまり、役所職員が書いた質問内容を議員が読み上げ、役人が書いた答弁を首長が読んで答えることもあるわけだ。

 そんな中、神戸で「駅前議会」(http://www.ekimae.gikai.net/)という活動を最近始めた市議がいる。井坂信彦さん(29歳)である。2月24日(火)夜に行われる2回目の駅前議会では、彼が3月の本会議で行う60分間の予算代表質問の内容を、市民と一緒に考える。前半はまず井坂市議がスライドなどを使って代表質問の原案をプレゼンし、後半、その内容を市民と一緒に練り上げていくという。

 果たしてどの程度の参加があるのだろう。1月に行われた1回目のときは、会場の座席が15席も足りなくなるという盛況ぶりだったそうだ。と言うことは、潜在的ニーズは意外に多いのだろうか?

 私は、現制度よりももっと直接民主主義的要素を取り入れるべきという立場だ。昨今、投票率低下が言われて久しいが、投票に行かない人がよく言うのは、「投票しても変わらない」という点。しかし、投票に行きさえすれば、それでいいのか。

 もちろん、選挙という数年に一度の“おまつり”は、重要な政治参加の方法であるが、もっと重要なのは、選挙時以外の政治参加だ。政治の仕事を究極的に言えば、“税金をどう使うか”ということ。

 その決定プロセスに参加・参画する手段が日常生活の中に組み込まれていない以上、政治離れ、投票率低下が起きるのは必然だろう。

 “自分たちのまちのことは、自分たちで考えて決める”。

 社会の閉塞感を打ち破るためには、政治を人任せにするのではなく、改めてこの住民自治の基本を考えてみる時期に来ているのではないだろうか? 上記「駅前議会」が、政治離れに歯止めをかけるきっかけになるのか、今後注目していきたい。

(本河知明)


 

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