この「動物」を誉めよ!
『 ネコ 』
ネコは犬よりエライ。これは自明のことである。誰がなんと言おうと…。ネコの偉さの根源は、彼(女)らの人間との間合いの取り方の絶妙さにある。付かず離れず、というか、畜生(犬のことネ)のようにご主人に媚を売ったりしない。あの畜生の、外出から帰った飼い主に対する態度! 大仰に尻尾を振り、喜色満面という風情で走りより飛びつく。まったくもって人間と同じ動物としての誇りというものが感じられない。 人間の中には、「だから犬がエエんやんか」などとのたまう輩がいるが、そういう者たちこそが全生命の平等を目指すディープ・デモクラシー(深層民主主義)の実現を妨げている、ということをはっきりと自覚してもらいたいものだ。 その点、ネコはいい。普段の素っ気無い態度に反し、私が病気で苦しんでいるとき、ネコは何気ない顔付きで、私のそばに寄り添っている。 しかし、決して「クイーン、クイーン」などといかにも心配しているような態度は見せない。ただ、傍にある。 尻尾の振り方ひとつとっても、犬とネコでは大違いだ。犬のあの大げさな尻尾振りは、全面的な人間への迎合の証でしかない。その点、ネコは、こういう尻尾の振り方はしない。 人間が見ているテレビの上で尻をこちらに向けて寝そべっているネコ。 「**ちゃん」と人間の一人が呼ばわる。するとネコは、「聞こえてるヨン」とばかり、二、三回尻尾を振る。ところが、その呼ばわりが三回を過ぎると、やつはもう尻尾なんか振りはしない。「何べんも用もないのにワテの名前を呼
ぶな」という態度がありありとその背中に窺える。ネコはいい。
実は筆者は戌年である。しかし、自分の戌的性癖には辟易するときがある。とくにおまんまが絡んでくると、誰にでも尻尾を振る。ああ、厭だ厭だ! でもさ、世の中のほとんどの人間は犬だよね。だから、同病相憐れんで犬にシンパシーを感じるか、それともネコの「唯我独尊」性に憧れるか…。違いは大きいようで、案外そうでもないのかもしれない。
(ネコまんま) 2004年5月
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