このひとを誉めよ!
《フリーライター・永江朗》
「週刊朝日」3・5増大号(2004年)。58〜59ページにトヨタの広告。 永江朗は、同誌に「新書漂流」という800字ほどの連載書評コラムを持っている。103回目(同号)で取り上げたのは、阿古真理の『ルポ「まる子世代」』(集英社新書)である。
永江は、同書に書かれているのだろう、「まる子の現実は厳しい」と述べる。そして、まる子世代(1964〜1969年生れ)の親は高度成長と引き換えに"外夫内妻"のライフスタイルを余儀なくされ、子どもたちは母子密着型の家庭で育ち、そのツケが回ってきて彼女らの現実が厳しいのだ、と論評。でも、それは「親たちが悪いのではない(いや、少しは悪いか)」と続ける。
では誰が悪いのだ…と思いながら読んでいると、「社員の生活よりも儲けを大事にする企業と、企業の論理優先の政策をとってきた政府が悪い。そして時代が変わったのに政治を変えなかった有権者がいちばん悪い」と書く。
「なんのこっちゃ」と思っていると、たたみかけるように、経団連の奥田会長(元トヨタのトップね)が「教育費や過大な生命保険加入などの家計の無駄を見直すべきだ」と発言したことに触れ、「企業の経営者が社員の生活をどのように考えているのか、よくわかる発言だ」と断じる。そしてトドメの一発を炸裂させる。
「私は『一生T社のクルマを買わないぞ』と強く誓った」。
これはアッパレである。フリーライターのブンザイで、しかも同号にトヨタ
の広告が載っているにもかかわらず、この発言はリッパである。でもしかし、
来週から連載が終わらなければいいのだが……。
(CWH) 2004年3月
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