参加レポート「行ってきました○○へ」
行って来ました『お話の語り手講座』 〜あなたもお話の語り手になりませんか〜 (03年10月)
10月25日(土)の修了発表会で「第25期 お話の語り手講座」10回が終わった。大々的な募集をしなくても毎年参加者が集まってくる不思議な講座だ。今回、私は受講生になった。その体験談を語りたい。
この講座は、かつて他の語りの講座を受講した人、すでに図書館などでボランティア活動をしている人、初心者など、様々な人が集まる。しかし、みんなそれぞれ講座終了後の夢や希望を抱いて講座に臨んでいることが、一人ずつ前に立って、自己紹介をした言葉の中にぎっしりと込められていた。
私も「人前で話せるようになりたい」という目標を掲げ、この機会に自分磨きをしたいと思っていた。
この講座の魅力は、講師の語りが毎回聴けることだ。どういう語りをしたらいいのかわからない私たちに、言葉で説明するよりも3人の講師が交代で実際に語ってお手本を示してくれる。語りが始まると、受講生は興味津々で身を乗り出し、真剣に耳を傾ける。そして、語りの世界に吸い込まれていく。その時、語り手と聞き手はその場を共有する。語りに心がこもっていると、聞き手が物語をイメージしやすい。間の取り方や語る速度、聞き手が誰か? などによって、語り方や何を語るかが変わってくる。
発表会では、何でもやりたいものができるわけではない。受講生が多いため、5分以内と制限がある。また、絵本なしに語ってもわかる話を選ぶことだ。講座の中で、やりたいお話の本を持ち寄り、講師や受講生に見てもらう日もある。また、発表会前の3回の講座の中で最低一人一回はみんなの前で発表する。このことにより、本番の一発勝負にならずに講師のアドバイスをもらうことができる。これは、その人にあったよりよい語りをするためのうれしい配慮だ。
修了発表会では、修了証書を手にした受講生たちの顔はうれしさ半分、不安半分で素直に喜べないようだった。あとに控えている発表の、いろいろな想いを心の中で抱いていたからだろう。私もドキドキしていた。周りの人と話す余裕などない。正面で語っている人を見ていると、その声や表情から緊張が伝わってくる。順番が近づくにつれて、ますます心が落ち着かない。しかし、直前の人の語る姿を見た時に少しホッとした。自分の番になって、「よっしゃー!」と心の中で気合をいれて、顔を上げた。
間違ったらどうしようという不安な想いを抱きながら、聞いている人の顔を見ながら語った。ほんの数分の出来事だったが、私は、一つ自分が成長したと思えた瞬間だった。語り終えて思わず「ありがとうございました!」と叫んでしまった。心に余裕がなくて、最後にみんなの笑顔を見ることができなかった。
午前中の発表が終了した時、「お疲れ様でした!」と発表を終えた人たちが言いあった。その顔はとても清々しい。
お昼は、一人一品ずつ持ち寄った食べ物をバイキング方式で自由に取って食べた。そのおいしさといったら格別だ。にこにこと食べていて、これから発表を控えている人たちに羨ましがられた場面もあった。
この講座を終えた時、始まる前と少し違う自分がそこにいた。今までは、人前でうまく話すことができず、下ばかり見て、前を見ようとしなかった。私は5ヶ月で「成長した」と思った。それがあまり苦に感じなかったのも、この講座のおかげだ。講座の中でみんなの姿を見て、私も頑張ろうと思った。
「語りは一人ではできない。聴く人がないと成り立たない」「人との交わりの中で語りは成立する」と講師の方が何度も言っていた。私は、これから語り手としてボランティア活動がしたい。その中で、人と多く接しながらもっと学んでいきたい。
ところで「あなたも語り手になりませんか?」
安部聡子
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