お薦め映画! 勝手に紹介
『プロミス』
監督・プロデューサー:ジャスティーン・シャピロ、B.Z.ゴールドバーグ
共同監督・編集:カルロス・ボラド
製作:PROMISES FILM PROJECT
配給:アップリンク
http://www.uplink.co.jp/film/promises/
「僕がアラブ人と仲良くなんかしたら、友だちに臆病者扱いされちゃうよ」 「アラブ人の子どもとは会いたくもない」
イスラエルの子どもが言う。一方、パレスチナの子どもも、同じく心を開くことができない。
「仲良くしたところで何の得ににもならないさ。俺たちが受けてきた迫害の10分の1も親身に考えてくれるもんか」
『プロミス』は、まだ比較的平穏だった1997年から2000年にかけて、イスラエルとパレスチナの子どもたちを撮影したドキュメンタリー。イスラエル・パレスチナ問題は、子どもたちの考えにも影を落とす。
しかしイスラエル側のちょっと好奇心旺盛な双子が、監督を通してパレスチナ側の子どもたちへ次のように呼びかける。
「僕は君に会いたいです。そして君がどんな意見を持っているのか知りたい。たとえ僕たちがお互いに違っても…違う…違う意見でも」
ある子は会うのを渋る。しかし「会いたい!」と応えようとする仲間たちがその渋る子に語りかける。
「どうしてそんなふうに決めつけたりするの? ユダヤ人に私たちの気持ちを伝えたことが? パレスチナ難民としての境遇を説明した? 一度もないから必要なの。アラブ人とユダヤ人には対話が必要だわ」
一日だけだが、イスラエルとパレスチナの子どもたちが遊んだり対話したりと、一緒に時間を過ごすことが実現する…。
ちょっとした好奇心・関心と勇気が平和への第一歩だと思う。そこから対話や異文化交流が生まれる。対話とは、相手を言い負かすための討論とは違う。これまで異なる環境で経験してきたお互いの記憶を、交換し、分有するプロセスだと思う。そのときはじめて、それまで“死者○名”といった数字でしかなかったものが、顔や名前を帯びて想起されるようになる。
国家や宗教組織といった共同体名を主語にして物事を考えている限り、平和には近づけない。一人一人の日常の営みの中にこそ、平和への鍵があると思う。そこにスポットをあてることこそ、ドキュメンタリーの真髄なのではないだろうか?
(本河)2004年4月
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