DVD評
『The Choice』
(DVD『マイケル・ムーアの“恐るべき真実” アホでマヌケなアメリカ白人』3巻より)
「ニュースをお伝えします。あのマイケル・ムーア監督が木を選挙に出馬させました」。
2000年のアメリカでの連邦議会下院議員選挙。再選を目指す現職議員435人のうち、その4分の1は対立候補がいなかった。選択肢なくして民主主義なし。ろくでもない候補ばかりでは、誰も選ぶ気にならない。当然、投票率も下がる一方。そこで、『ボウリング・フォー・コロンバイン』でおなじみ、今夏の『華氏911』も期待されているマイケル・ムーアが、現職議員に挑戦状を叩きつけた。
彼が立候補させたのは「フィカス」。クワ科イチジク属の広葉樹の植物。緑の党ならぬ、緑の候補者だ。
法律では立候補の条件として200名分の署名が必要。210名分の署名を集めて、州の選挙管理課へ届け出たが、選挙登録が未登録ということで立候補資格がないという。しかしそれでも投票で書き込みが多ければ当選が可能だ。
選挙活動は、いたって真剣そのもの。でも、ブラックユーモアっぷりは彼ならでは。「彼は献金を受けません。企業と癒着しません。ロビー活動にも屈しません。彼が受け取るのは、水と空気と日光だけです」、「議員は工場(プラント)を閉鎖させた。この植物(プラント)のほうがずっとマシだよ」、「今より悪くなりません」と訴える。 有権者の反応は上々。それどころか、途中の世論調査では、支持率88%と現職議員を圧倒的にリードする。選挙の顛末は、はたして…。 一応、断っておきますが、この作品はフィクションではありませんよ。
本河知明 2004年7月
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