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市民ライターのキモ 〜 その真実と技術
         2006年2月20日
                              

(25) 文章にもいろいろあるが、やっぱりレポート文が基本
                                      吐山継彦

                             
 ぼくが編集委員をしているボラ協発行の市民活動総合情報誌『Volo(ウォロ)』の目次を見ると、いちばん最初に「V時評」というページがある。これは、新聞でいうと社説にあたるもので、時どきの出来事や政治的な課題について、理事長、事務局長をはじめ、何人かで交代で担当することになっている。

内容については、書き手にまかされているが、ボラ協の公式見解のような性格もあるので、編集委員のメーリングリストで相談を投げかけることもある。文章量は見開き二頁分の二四〇〇〜二六〇〇字で、やや硬い論文調だ。

次に特集だが、扉を入れて十頁もあり、二人から四、五人で分担して執筆に当たる。手許にある二〇〇五年十二月号の特集は「アートとNPOの交差点」というタイトルで、二人の編集委員が執筆を担当した。五つのアート系NPOに取材しているので、担当した二人は本当に大変だったと思う。特集の場合、編集企画は、大体誰か一人がたたき台となる企画書を編集会議にかけ、みんなでアイデアを出し合い、取材先の人物や団体についてもアドバイスを受ける。

 その次は、「語り下ろし市民活動」というシリーズ企画で、「福祉や人権、教育、国際交流、環境、等々、さまざまな分野で展開されてきた市民活動(運動)の実相を、その活動を中心的に担った人びとの証言で綴る」ものである。これは、原則四頁分の原稿を三回にわたって続けるというもので、三〇〇〇〜四〇〇〇文字を三回続けるので、トータル一万字以上の分量となることもある。

取材者が質問し、インタビュイーがそれに答える、というスタイルである。 これに似たものが、「この人に」というコーナーで、ボランティアや市民活動に携わっている人たちにインタビューをして、四頁の原稿にまとめる。「語り下ろし市民活動」よりは“軽い”というと語弊があるが、気楽に読めて興味深い内容にしなければならないので、「V時評」のような論文調のものはいくらでも書けるが「『この人に』は苦手」という編集委員もいる。ほかにNPOやコーディネーションの「現場」からのレポート、エッセイ、お店紹介、書籍や映画の紹介、ニュースやトピックスなどがあり、それぞれ少しずつニュアンスの異なる文章を書かなければならない。

 市民ライターの場合、基本となるのはニュースやお店紹介などのレポート文である。どちらも現場に赴き、しっかりその場を観察し、取材して、見聞きしたことを飾らずありのまま書けばよい。重要なのは、自己主張するのではなく、淡々とあったこと、感じたことをストレートに書くことだ。

 市民活動関係者のなかには、「文章というものは、自己主張するために書くのであって、見たこと聞いたことをそのまま書くのは苦手」という人も多いような気がする。しかし、やっぱり基本は、起こった事実を、その場にいなかった人たちに「何があったのか」レポートすることではないかと思う。レポート文というのは絵画でいうとデッザンのようなものである。何回も訓練していないと、「伝える」という基礎がしっかりできていないから、何を伝えたいのか分からず、独りよがりの自己主張を押し付ける文章になる。そんなのは、ハタ迷惑なだけである。

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