市民ライターのキモ 〜 その真実と技術
吐山継彦
(6) 取材とインタビュー(三)「おもしろがって話を聞くこと」
●市民ライターが取材やインタビューをする相手は、市民活動・NPOのリーダーや関係者など、共感できる人物である場合が多いのではないだろうか。新聞記者のように、汚職をした権力者や官僚、事件を起こした財界人などを追及する、というケースは少ないはずだ。つまり、批判精神を発揮するよりも、共感性に基づいて取材・インタビューしなければならない場合が圧倒的に多い。
●だからとにかく、相手に共感し、相手の活動に興味を持つことが、大切である。相手のことが知りたい、相手の行なっている活動がなんておもしろいんだろう…という感じがインタビュイーに伝わりさえすれば、取材・インタビューはほぼうまくいく。こちらに聞きたいことがあり、相手に話すべき内容がありさえすれば、インタビュアーは聞きたいことを聞き、インタビュイーは話したいことを話せばよいだけである。
●基本的に人間には、自分のしている意味のある活動や仕事をほかの人たちに伝えたい、分って欲しい、という欲求があるのだと思う。このことは、ぼくのライターとしての経験からも言えることである。今までにおそらく500人ぐらいはインタビューしていると思うが、相手の仕事や活動について取材をして、その内容が貧弱すぎて書くのに困ったということはなかった。みんな自分の仕事や活動に誇りを持ち、おもしろい話を聞かせてくれた。
●だからインタビュアーがするべきことは、興味深げに話を聞くことである。興味津々、これほどおもしろい話があろうか、という聞き方をすべきだ。もちろんおもしろくない時に無理やりおもしろそうな顔をする必要はないが、ぼくはどんな人の話でもおもしろいと思うし、一人の人間には絶対にどこか興味をひかれるところがあるはずだから、おもしろくないとしたら、インタビュアーである自分がそれを引き出せていないのではないか…と疑うべきだろう。
●取材者として自戒しなければならないのは、媒体の編集企画や記事の取材コンセプトに無理やり合わせようとして、インタビュイーの話をあまり聞かず、誘導尋問のようなインタビューをすることである。なれてくると、これをやりがちになる。相手が何を話すかよりも、こちらの編集企画に合わせて無理やり話を取材意図どおりにもっていく。しかし、これはよくない。相手の立場を自分に置き換えたらすぐに分かることだが、自分の考えてもいないことを、あたかも自分が言ったように作文されるのはとても不愉快なものだ。
●そんなことが起らないようにするためには、インタビュイーの人選について熟考することが必要だ。安易な人選、不適当な人選は双方にとって不幸である。だからこそ、人選のためには時間をかけ、充分な情報収集をしなければならない。ただ、そうは言っても、何人もの候補者に断られ、やむなく選んだ人がハズレという場合も多々ある。そんな場合は、できるだけたくさん話を聞いて、編集意図に合う発言をツギハギするしかない。
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