連載エッセイ
「地球を見つめて〜なんちゃって」(8)
かざりえみこ
2004年5月20日
いろんな動物がいるけれど
こんな昔話があります。
じいさまが山の畑へ草取りに来て、疲れ果てているところへ猿が現れます。そして、あっという間に全部の草を取ってくれます。その見返りに、じいさまの娘を嫁さんにした猿が、その娘の機転で谷川に流されてしまうという気の毒(?)なストーリーです。
猿はこのおはなしの中では悪いことをしていません。むしろじいさまをボランタリーに助けてやったのです。いったいなんということを。これは悪質なイジメではないの。わたしは猿に同情をしていました。
ところが現実には、今でも山から出没する猿に、丹誠込めて作った作物を荒らされて泣いている多くの人たちがいます。せっかく郊外に移り住んでたのしみに野菜や果物を作っているのに、実る頃になると猿やイノシシにやられるというのです。情けないし、腹が立つし、と話してくれました。観光みやげ店の売り物すらねらわれる話も聞きました。
農家では収穫期の作物が大々的に被害を受けていることを知りました。
農業に従事する人々の話を聞き、関連の図書を見て、その数字の大きさに驚きました。猿、鹿、イノシシ、熊、鳥……。害獣と呼ばれる動物の多いこと!
特に滋賀県では猿の被害だけで年間なんと4,197万円を越す金額とか。被害は50市町村のうち32市町村におよび、水稲、芋、豆、麦、野菜類、果物類、たけのこ、しいたけまで広く被害を受けているとのこと。お金も人手もつぎ込んで、対策に頭を悩ましているようです。
都会暮らしに慣れた私は、つい近隣の県の農林業の被害についてあまりにも無意識に過ごしていたことをこの数日恥じ入っています。
猿でも鹿でも石をぶつけたいよ、殺したいよ、とため息まじりで話してくれました。害獣に泣かされ、獣害対策に追われているのは東京都をはじめすべての道府県に及んでいるとか。
一方でブラックバス駆除に反対する人たちもいるのです! あと100年も
したら、ブラックバスの恩返し、なんていう昔話ができたりして!
いろんな動物がいる地球です。生き物は人間だけではないことをじっくり考
えるギリギリの〈時点〉に立っているような気がしてなりません。
「地球を見つめて〜なんちゃって」目次
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