連載エッセイ
「地球を見つめて〜なんちゃって」(58)
かざりえみこ
2008年7月20日
食い合わせ
昭和30年代私が小学生の頃、田舎のお盆には、ご先祖様にお参りするために、親類が大勢集まって来ました。夕食には、畑から直行の野菜で母や叔母たちが天ぷらを揚げます。天ぷらはたいていの人の好物です。あとでスイカも出ると知って、私は富山の薬屋さんが置いていった風船に描いてある「食い合わせ」の絵が気になっていました。違反したらお腹が痛くなると聞いていました。ウナギと梅干し。スイカと天ぷら。強烈に意識していたのはこの二つで、母に言うと「イヤな人は食べないこと」これで終わりです。姉たちは「あんたのを食べてあげるよ」です。大勢の中でひとりだけ食べないのもくやしいので、結局はみんなと競り合って食べました。そのうちに、あれは迷信だと思うようになりました。
先日、ウィキペディアに「食い合わせ」の項を見つけました。久しぶりに出会った言葉が懐かしくて読み進むと、あの風船の絵がまんざらウソばっかりを並べていたものでもないこと、その理由などが載っているようです。。まずは「ウナギと梅干し」では「脂と酸で刺激が強く、胃に負担をかけると解釈された。現在では、単に食べ過ぎを防ぐためのものとされる」それから最大の関心事だった「天ぷらとスイカ」は「天ぷらに氷水」と並んで「水と油で消化に悪いとされた。実際、胃の負担が増加し、消化に支障をきたす事が確認されている」とありました。他にはぜいたくを戒める意味もあるらしくて、なるほど、あの時代ならと納得しました。あの頃の我が一族はそろって食い意地もはっていたし、胃腸が丈夫だったのかも知れません。
食い合わせのことを『合食禁』と書いて「がっしょうきん」ということや「食べ合わせ」とは意味合いがちがうこと、海外の諸国でも言われていることなども知りました。さらに、現在になって医学的栄養学的に避けたい食い合わせがあって、例えば「ラーメン・ライス」は、疲労や肥満を招く恐れがあるし、「スイカ・ビール」は、急性アルコール中毒を引き起こす可能性がある、などけっこう怖い理由があるようです。
食い合わせはもとは中国から伝えられた陰陽五行説を食材にあてはめたものとされるそうで、科学的根拠のないものもあるが、中には医学的に正しいとされるものも存在している、とのこと。医食同源の中国の思想が、長い時間の果てにこうして些細なことにも入り込んでいると思うと、真夏の北京で開催されるオリンピックが急に身近に感じられます。食い合わせとオリンピック、おかしな取り合わせ、ですか?
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