連載エッセイ
「地球を見つめて〜なんちゃって」(57)
かざりえみこ
2008年6月20日
実のなる季節
6月に入るとユスラウメが赤く色づきました。懐かしさに思わず手が伸びてしまいます。小指の先ほどの小さな実で、桃の形をし、梅のように酸っぱく、花は桜そのものです。辞書によれば『梅桃』または『山桜桃』と書いてユスラウメ。たのしい木です。
雨の中に、黄色に熟したビワが目立ちます。そういえば去年もそこでしばらく立ち止まり、北原白秋の『ゆりかごの唄』を口ずさみながら帰ったことを思い出しました。私の育った雪国にはビワの木などありませんから、たまに、ひとり1個を食べたら終わりという貴重品でした。見たことのないビワの木にあこがれ、『ゆりかごの唄』の歌詞をそらんじたものでした。
大阪でサクランボの大きな木がある家を知っています。先日その下を通って見上げた枝には小鳥がついばんだ形跡のある赤い実ばかりが目につきました。ねらっているのは多分、ヒヨドリでしょう。葉の間から複数の鳴き声が聞こえていました。
そういえば、グミもこの季節です。
私が絵本を読みに行ってる保育園にはビックリグミの木があります。数年前の改築の際に、進呈した一鉢が、地植えにしてもらったおかげでたくさん実がつきます。先日、園児さんたちに「グミ、食べた?」と聞いたら「食べてもいいの?」と逆に聞かれました。「とって食べてみて」と言うと「洗わなくても食べていいの?」とまた質問。どうぞ、と言おうかどうしようかと迷いつつ「先生に聞いてからね」と答えてしまいました。何でも口に入れる癖をつけたらいけないかなと案じたローバ心(?)からでした。
梅雨どきといえば梅の季節。早くも出盛っています。無傷の青梅は梅酒に、黄ばんでくると梅干しにしますが、漬けて終わりではなく、梅干しは水が上がるまで当分の間は気を抜けません。砂糖漬けも梅酒もたまに振ってやるとよいそうで、毎日観察するのも私の楽しみなのです。
この年齢になってもこうして季節の木の実が私の生活を彩ってくれるのは、幼い頃に「木と親しくしていた」からでしょう。周囲の大人たちが、やれ食べるなとか、さあ食べてもいいとか教えてくれました。いま、地域のコミュニケーション力をつけるためにも、街なかに実のなる樹木を植えてほしいと要望したこともあるのですが、大阪ではなぜかコブシやハナミズキばっかりがズラリと目につきます。どうしてでしょうね?
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