連載エッセイ
「地球を見つめて〜なんちゃって」(54)
かざりえみこ
2008年3月20日
人間と水
大人の体は体重の70%が、赤ちゃんなら80%が水でできている・・・。
こんなことを知ったのは、中学生になったころかもしれません。半世紀近くも前のこと、頭の中に洗濯機の脱水機が思い浮かびました。あれで人間を回すと、50キロの人はシワシワの15キロになって、脱水ホースの下には35キロの水がたまっている図でした。思わず私はスッゴーイと感動し、「%」の計算も引き算も正しいのに満足していました。
今にして思えば全くありえない図ですが、人間はそれほど水をたたえている生物であることは否定できません。気をつけてみると書店に並ぶ健康関連雑誌には数ヶ月に一度のサイクルで、水に関する特集が組まれているようですね。どんな水がいいか、ミネラルウォーターの種類、飲み方のノウハウ、病気と水の関係、水道水がいいとか悪いとか、こうして水で命が救われた、などテーマは際限なくあります。これら全てを実践すれば、医師も薬も不要と思わせる内容です。スーパーなどの飲料水コーナーには国内外の山の水・海洋の水がズラリと並びます。
ふつうの人間は一晩の間にコップ一杯分(約200ミリリットル)の汗をかくそうです。私は日常的に外に布団を干す前とあとの重さでこれを実感します。かつて、50歳を前にした頃、午後3時をすぎると決まって頭痛になりました。医療に詳しい友人にたずねると「水切れで血液ドロドロ状態」といわれました。仕事中にトイレに行く煩わしさを避けるために、私はなるべく水分を取らないようにしていました。トイレと脳梗塞とどっちがいい? と彼女に脅されました。それからは水筒持参を始めました。頭が痛くなってから薬と一緒に水を飲むよりも、気がついた時に水を飲むだけで、頭痛の悩みが軽減しました。たしかに、水分さえ取っていれば、ひとまず安心できることもあったのです。
最近、思いがけないことで体調を崩し、10日あまり入院しました。その間、多くの検査を受けましたが、中には前夜から水分抜き・朝食抜きというのが何度かありました。ところが病院の都合なのかお昼過ぎになっても呼びに来ません。トイレに行く間隔は開き、当然ですが、尿の色も濃くなります。それにのどはカラカラ、頭はガンガンしてきます。水の禁断症状にちがいないと確信し、病気よりも辛く感じました。この手の検査が二日も続いて繰り返されると情けなくて悲しくなりました。
幸い、検査の結果が悪くなかったのでこうして退院して養生していますが、自分の健康を過信ぎみだった私にはクスリでした。反省しながら「水分摂取」の人体実験?を意外と冷静に観察?をしたのは収穫でした。人間は水だけで生きるにあらず、ふだんの休養も大切です。オーバーワーク気味の方はご用心召され!!
「地球を見つめて〜なんちゃって」目次
|