連載エッセイ
「地球を見つめて〜なんちゃって」(53)
かざりえみこ
2008年2月20日
中国の大雪被害におもうこと
インターネット上で中国各地の豪雪・寒波被害の様子を見ました。なまなましい写真に驚き、被害の程度や経済被害の状況などを知ると、気の毒で仕方がありません。時期がちょうど旧正月・春節と重なりました。遠く離れた親兄弟に会いに行こうとやっとたどり着いた駅は雪の中。混雑する駅舎の外で、仮設トイレに並ぶ人たち、何時間も何十時間も来ない列車を待つ人たちを軍の兵士がガードして混乱を防いでいる様子、そして先を争って列車に乗ろうとしている様子、どれを見ても胸が痛みます。ただ待っているうちに休暇が終わり、結局、故郷に帰れなかった人たちもたくさんいたそうです。人々の去ったあとのゴミの山も写真になっていました。
香港とほぼ同じ緯度にある南寧市ではバナナ畑が寒波で立ち枯れです。また、貴州省や湖南省などでは農業被害と合わせて、交通インフラの麻痺による、物価高騰の様子も伝えられています。たとえば、カップラーメンが元値の10倍、卵が25倍、キュウリが7倍以上という狂乱ぶりとか。庶民は泣いているにちがいありません。
私は、世界地図帳でたびたび中国のページを広げるうち、中国の地名に親しくなりました。オリンピックが開かれるからではありません。中国にはいくつもの少数民族が住んでいて、それぞれが固有の民話を持っているからです。国立民族学博物館名誉教授で、中国諸民族の民間伝承を研究されておられる君島久子先生が書かれた膨大な著書のうちのたった数冊なのですが読んでいて心が躍るような興味を抱きました。日本起源と思いこんでいた昔話とそっくりの話が、あの広い中国のあちらこちらに少しずつ形をちがえて伝承されていることを知りました。チワン族、ミャオ族、リー族、イ族、タイ族……。その人たちが住んでいる土地や、お話に出てくる山や湖、河などを地図で探しているうちに、地名のいくつを知りました。そこではかつて、人形がものを言い、イヌが語り、人妻が天に帰り、あの『シンデレラ』の最古の話だってあるのです。
数千年のあいだ、数え切れないほどの天変地異を経ながら、民族の悲しみや願望から生まれ「生きる知恵」として後世に語り伝えられてきたのが民話でしょうか。その民話のふるさとに住む人たちが、いまもまた、非情な気象災害を受けました。しかるべき援助のもとに立ち直ってほしいと願っています。
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