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 連載エッセイ
 「地球を見つめて〜なんちゃって」
(55)
                                かざりえみこ

                                   2008年4月20日

樹木や花から始まる会話水


3月から5月のはじめごろまで、私は意識的に徒歩で買い物や用事に出ます。梅、桃、レンギョウ、コブシ、モクレン、桜……。つぎつぎに樹木の花が咲き、パンジー、水仙、ムスカリ、桜草、チューリップなどの草花もあって、よその家の庭木や玄関先の植木鉢、花壇などの花見をさせてもらうのが私の楽しみなのです。そこの家の人や近所の人たちと「今年はよく咲きましたね」とか「これは珍しいですね」などと言葉を交わして顔見知りになり、花友だちになることもあります。

この春に、例年見上げていた桜がありません。立派なガレージが出来ていました。別の所では大枝が切り落とされた桜が、落ち武者の影絵のようにみすぼらしく立っていました。その家の人が「毛虫がわいてねえ、落ち葉も汚いし、ご近所から言われますねん」とつぶやきました。春は花を楽しませてもらうお返しに、秋は落ち葉を掃いてあげようと思えばいいのにと、私は寂しくなりました。

街では、電線に邪魔だ、信号が見えない、大きくなりすぎた、公園内で見通しが悪いなどの理由で年中行事のように作業着姿の人たちが樹木を切ったり、枝を落としたりします。一方では街に緑を!とスローガンがかかげられているのですが……。都市のヒートアイランド現象を抑止する効果がある樹木です。なぜ、最初からその場の目的に合う高さや枝張りで種類を選択しないのでしょう? 「豊かな緑」からはほど遠く、枝を切られて勢いを失った木を見るたびに、管轄の役所への不満が募ります。

平成17年(2005年)8月12日に国土交通省 都市・地域整備局 公園緑地課緑地環境推進室が出した『都市の緑量と心理的効果の相関関係の社会実験調査について』という論文と出会いました。
(<http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/04/040812_3/01.pdf>)
要約すると、都市の緑は、うるおい感、やすらぎ感、さわやか感などの心理的効果があり、都市緑化は清涼感や、アメニティ(快適性)が高まる効果がある。また、疲労感をやわらげ、人々を引きつけ、家族や地域の交流の場となる効果があるなどとと多方面にわたって述べられています。くれぐれも机上の空論にならないようにと祈ります。

この中で「緑は人々を引きつけ、家族や地域の交流の場となる効果」に特に注目します。今こそ、木や花を前に人々が語らう『街の縁側』的な「場」がほしいものです。草木のことから始まって、都市緑化や地球の環境問題までも、知らない人も交えて雑談に花を咲かせる……!? 冒頭の花々のことから思い合わせてこの論文を読み終えました。                 

「地球を見つめて〜なんちゃって」目次   

 

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