連載エッセイ
「地球を見つめて〜なんちゃって」(52)
かざりえみこ
2008年1月20日
果実酒(リキュール)
くだものを焼酎やブランディーなどの蒸留酒に漬け込むと、なまの実を食べるときとは、ひと味ふた味も違った楽しみがあります。自分で育てたり、知り合いから分けてもらった無農薬の柑橘類やプラム類などを見ると、私はつい果実酒を作ってしまいます。この約30年間、私の趣味となりました。どちらかといえば、飲むよりも漬ける方がこの先を期待して何倍も楽しみですが……。かすかに色が移っていく経過、氷砂糖が溶けていく様子、日にちをかけて果物がシワシワになっていく段階をながめていると、相手が生き物にも思えてきます。私流の特徴は、世間の標準よりも砂糖類をずいぶん控えていることです。
寒い夜、思い出して、小さなグラスの底に梅酒をちょっぴり入れ、時間をかけて青梅のエキスを静かに味わいます。アルコールは私にはほんの少しで十分。馥郁とした梅の実の香りがともすれば疲れ果てた心を豊かにしてくれます。ブランディーで漬けた梅酒は胃よりも心に効くようです。一方、外出先の空気が乾燥していたのか、ノドがいがらっぽくなっているときには、カリン酒。これは声がおかしいかな? と気になるときに効果があります。ただし、とことん、痛めてしまったノドには、やはりお医者さんですね。とても疲れたときや、風邪かな? のときにはアロエ酒。色を楽しみたいときにはイチゴやプラムの甘い香りと赤い色が最適。なぜか気分がうき立ってきます。スダチやキンカン、レモン(輸入物は厳禁)のさわやかな香りも大人っぽくていいものです。
むかし、厳密な酒税法が変わって、家庭で果実酒を作っても罰金を科せられな
くなった時のことを、なぜか私は記憶しています。母と一番上の姉がそんなことを言いながら、青梅をどっさりつけていました。あれは1963年、東京オリンピックの前の年でした。祖母がドブロクを造って、それが発覚し、とても大きな額の罰金を払ったあとだったのです。今は穀類とブドウ以外なら何の素材でも果実酒にしてもいいことになっているとか。ただし、『自家用』に限るそうです。それもお客に出してお金を受け取ると酒税法違反、プレゼントやおみやげに家から持って行っても違反だそうですよ。
暖房の効いた居酒屋でおおぜいの仲間とジョッキを傾けるのもいいですが、本を開いてひとりお好みの果実酒を口に含んでみてください。今の時期なら無農薬のキンカンやイヨカン、ハッサク、夏ミカンの晩柑類が容易に手に入ります。来年の冬の心と体のために試してみてはいかがでしょう? 作り方はWEB検索をしてみてください。
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