連載エッセイ
「地球を見つめて〜なんちゃって」(51)
かざりえみこ
2007年12月20日
12年目のシクラメン
シクラメンの原産地は、トルコの地中海沿岸にある山地と知ったのは、もうずいぶん昔、あの『シクラメンのかほり』がはやった頃でした。その後、花博会場の鶴見緑地で原種のシクラメンを見ました。スミレくらいの質素な花で、葉も数枚ついているだけでした。
シクラメンは名前に「シ(死)」や「ク(苦)」がついているし、鉢植えは「根付き(寝付き)」だから、決して病人の見舞いに持っていかないということは、長い主婦歴の間に得た知識です。私ならもらえばうれしい、などと言えるのは健康だからでしょう。「シが死」などと言わずにすむように、日本に導入された明治期にサイクラメンと言えばよかったのにと、いさかか不満です。CYCLAMEN の綴りの前半の意味は、いわゆるサイクルです。ちなみに、シクラメンの花後に花ガラを摘まないでおくと、なよやかだった茎がビシッと堅くなって次第に輪を描くように曲がり、実が完熟する頃には先端が地面に届き、いつか土に根を張り、翌春にはかわいい芽が出ます。種を摘んで別に植えると、よりいっそう丈夫な芽が出ます。私が試したところでは、寒さにもけっこう強いことがわかりました。ふつうは花を長く咲かせるために花ガラ積みをこまめにします。実をつけると植物の本能で、花を咲かせるよりも実に養分をつぎ込むようです。
ところで、見てわかるようにシクラメンは球根で育ちます。花後の管理が良ければ球根が生きている限りは咲くということです。我が家には今年で12年目という株もあります。店先に出るまでには2〜3年かかりますから、15歳くらいかも知れません。かなり大きな球根です。他には7年、5年の株もあります。真冬でも暖房のある部屋には入れませんので花が咲くのは春先。チューリップと並んで咲くシクラメンを見て「アレ? 冬の花じゃなかったっけ?」とたいていの人はビックリするようです。夏の間は鉢ごとすっかり乾燥させて、風が通る物陰に置きます。植え替えて秋のお彼岸頃に雨に当てると糸のような芽が一度に出て毎年私を感激させてくれます。
この冬、花屋さんに並んだシクラメンは例年よりも高価です。温室咲きの花にも石油の値上がりが影響しました。バイオ技術の進歩でより華やかになり、さらに高値の高嶺の花になるシクラメン。そこで提案です。お手持ちのシクラメンは花後も捨てないで、自然の温度で咲かせてみませんか。栽培方法は、たいていのガーデニングの本に載っています。
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