連載エッセイ
「地球を見つめて〜なんちゃって」(49)
かざりえみこ
2007年10月20日
シラミ
最近、日本の子どもたちの間で『アタマジラミ』が増えているそうです。
ウェブ上で『シラミ』を検索してみました。団塊世代といわれるわたしたちがシラミ駆除のDDTを浴びた最後の世代であることと思い合わせて、とうに忘れていた世界に引き戻されたような錯覚を覚えてしまいます。
校庭で一列に並び、先生から頭に白い粉をまぶされ、持っていった手拭いで頭をぐるりとしばりました。今日はこのまま寝ること。洗うのは明日。シラミを持っていると、血が吸われるだけではなく、発疹チフスという病気になるぞ。頭をくっつけて遊ぶ子どもは、すぐ他の人からシラミをもらってしまうから、こうしてクスリをかけている。こんなことを1年生だった私は、クスリでまっ白になった頭の中にしっかりと刻み込みました。男の子はクリクリの坊主頭。そんな子はノーマークです。対象は坊ちゃん刈りの男の子と女の子だけ。当時の女の子はおかっぱ。それもワカメちゃんのように刈り上げていました。
シラミのうち、コロモジラミは路上生活者などに発生しやすいとのこと。不潔にしていると爆発的に増えるようです。アタマジラミは長髪の人に多いとのこと。最近は子どもも大人もロングヘアが流行しています。また、いつ櫛を入れたか疑うようなモジャモジャヘアスタイルがはやっているのには、なにをかいわんやです。ケジラミは不特定多数との性行為でうつりやすいと聞けば、これも思わず眉をひそめます。
アタマジラミはシャンプーしたくらいでは、駆除できません。それどころか家の中でドライヤーをかけると、そこら中に飛ぶ可能性があるので、できれば外で乾かした方がいいそうです。アタマにシラミがわいたくらいでは発疹チフスにはなりません。DDT世代が言うのですから、半分は本当です。日なたでシラミとりをして貰ったものです。当時は多くの子どもがシラミを持っていたので、学校で嫌われたりいじめられたりということはありませんでした。ただ、シラミに噛まれると猛烈にかゆいので、いつもボリボリと頭を掻きむしっていました。授業中に集中力が損なわれるのはまちがいないところです。
さて、いまどき、シラミ駆除のために髪の毛を短くしたり、特別なシャンプーを使ったりすれば、シラミがいることを宣言するようなもの。きっと仲間はずれにされてしまう。そう考える人が多数派らしいのです。そのために、率先して予防しようとか駆除しようということにはならないらしいのです。これには驚きとともに考えてしまいます。シラミやシラミの卵からいじめの図式へ移行するのもあり得ると思われるだけに、なんとも悲しいことです。
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