連載エッセイ
「地球を見つめて〜なんちゃって」(46)
かざりえみこ
2007年7月20日
桃・花と実と葉と
桃が好きです。
春の花を見るのも、夏の実を食べるのも。
早春、花屋さんの店先には八重の花桃がならびます。強烈な「桃色」に、うれしい春のおとずれを実感します。女の子を連れたお母さんたちが、桃と菜の花の束を買い求める光景をほほえましくながめています。ピンクとか桃色といえば、性的にいやらしそうに使われますが、本来は性と豊饒のシンボルだったはずの桃です。
4月はじめ、満開の桜のボリュームに圧倒されて、あまり目につきませんが自然に咲いた桃の花はみごとです。温室育ちとの決定的違いは、花のたくましさでしょう。色も形もしっかり咲いてしっかり散ります。
濃い桃色でコロリンとした丸い桃の実は、据わりが悪いことから、馬に乗るのがヘタで鞍に尻が落ち着かないことを指して『桃尻』の語源とか。ウィキペディアに載ってました。
もともとは、秋のくだものだったようです。俳句では秋の季語ですから。
桃冷やす水しろがねにうごきけり 百合山羽公
桃の如く肥えて可愛や目口鼻 正岡子規
そういえば、近所の庭で毎春花を咲かせる桃の木には、いま、ピンポン球大の緑の実がまだ枝にしがみついています。果物屋さんには桃が出盛りになったというのに。
私が子どもの頃、病気のお見舞いにもらった桃の缶詰はカルチャーショックでした。こんなおいしいものがあるのかと驚きました。それというのも、近所のおじさんにいつももぎたての桃をもらうのですが、たしかに甘くて、さわやかで本当においしいのですが、カリカリと歯ごたえがあって、それが桃の味だと思っていたのです。もうお盆も終わった頃でした。当時はアセモやカブレに効くといって、桃の葉の煎じ汁で行水をさせられました。今でも桃の葉エキス配合のハンドクリームがあります。皮膚病に効く成分があるようです。
桃は昔から中国では仙果といわれ、不老長寿の果実、不思議な魔力を持つくだものといわれて珍重されてきたとか。中華料理で、お祝いの席に桃の形の桃饅頭が出ますね。
近年は科学的に解明されて、桃には糖尿病、高脂血症、高血圧の予防効果があるといわれて注目を集めています。食物繊維が便秘予防にもいいとか。その分、食べ過ぎると下痢をしやすいそうですからおいしくてもほどほどに!
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