連載エッセイ
「地球を見つめて〜なんちゃって」(42)
かざりえみこ
2007年3月20日
野鳥の学習能力
かざりえみこ
まもなく桜のシーズンです。今年の春は2月まで駆け足でやってきて、それからまた冬に逆戻り。桜をはじめ多くの種類の花を待っている人たちを(私を含めて)やきもきさせています。時期が来たら咲くよ、と桜が私をなだめてくれましたけど、ね。
毎年、桜の次期になると、私は咲き始めた桜の木の下に【落ちている花】を注目します。花が、花びら状態で散るのではなく、花の形のままで、ちぎられています。スパッと切れているのではなく、食いちぎったという様子です。
我が家の近所に育ち盛りの桜並木があります。植えて十数年。樹齢にしたら20年を越えたくらいでしょうか。年々枝を伸ばし、幹が太り、花の量が増えています。
数年前の春に、咲き始めたばかりの一本の木の下に限って、道路に十数輪の花が落ちていました。手の届かない所にあるので、人間のしわざではありません。翌年も。数が増えてその翌年も。その頃には私も了解しました。犯人はスズメとヒヨドリでした。
ヒヨドリが数羽でヒーヨヒーヨと鳴き交わしている枝から、私の目の前に花が落ちてきます。ある時はスズメたちがいました。咲き始めの頃に集中します。
ヒヨドリは体長が20センチ以上もあります。クチバシもメジロのように小さくはありません。スズメは穀類などをついばむのには向いていますが、小さな花の蜜を吸う形ではありません。このクチバシですから、真上から蜜を『吸う』よりも横から『食いちぎって』味わう方が効率がいいに違いありません。
開花してまもない花には蜜が多いこと、十数本の中でこの木に一番多くの蜜があるということの2点を彼らは学習したのです。どの木の花も同じだけおいしければ、同じだけ花が落ちるはずですから。ソメイヨシノ、オオシマザクラ、少し変わったヤマサクラなどが植えられています。
以前に我が家でブルーベリーを育てていました。少しでも実に赤い色があるうちは安泰ですが、明日あたり摘もうかな? という翌朝にはなぜか赤い実しか残っていないのです。そんなのは酸っぱくて食べられません。早朝に誰が盗むのかと思って、夜明けとともに台所の窓を開けて聞き耳を立てていたら、何とヒヨドリでした。それだけではありません。金柑もグミもヒヨドリは甘くなる頃にねらいに来ました。
スズメ、ヒヨドリなど『野鳥の学習能力』については、本当に感心します。
梅園では、メジロは蜜を吸うだけなのに、スズメが真似して、花をちぎって困ると聞きました。梅の花が子房のところで食いちぎられたら、スズメは即、害鳥です。
桜の蜜を味わったことのない方は、この春、どうぞスズメの真似をしてみてください。
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