連載エッセイ
「地球を見つめて〜なんちゃって」(38)
かざりえみこ
2006年11月20日
いろいろあるからいい
かざりえみこ
いよいよ紅葉の季節です。ひとそれぞれに好きな観光地や自慢のスポットがあるようです。カエデや山桜は紅色、黄色。ケヤキは褐色、イチョウは黄色、もえるようなドウダンツツジなど。その間に松の緑、竹の緑があればいっそう色が引き立つという舞台設定です。
北の地方に行けばブナの燃えるような黄金色に混じってカエデの紅。息が止まるくらいに感動した記憶もあります。さらにススキの銀白色や草紅葉。りっぱなものです。
自然は、冬景色の前、数日間を美の祭典としたのでしょうか?
都会の公園や街路樹、または建物の周囲の植栽にも樹木はあるのに、私をガッカリさせるのは、たとえばケヤキやクスノキで統一してしまうことにあるのです。
花が咲けば、コブシばっかり。ハナミズキばっかり。サルスベリばっかり。その上に「ハナミズキ通り」、「コブシ通り」などと名付けて排気ガスまみれになっている風潮を見ると、文明が進んでいよいよ人間が自然と乖離していく証拠を見せつけられた気分になるのです。
そんなことをぼやいていた私の家の近くにできたJ市民病院。ここの植栽は、このあたりではまれに見る傑作です。大した心意気です。完成して数年しかたっていないため、樹木が若くて風格には欠けますが、そこを通るたびに、プランを作った人たち、ゴーサインを出した人たちに会いたくなってしまうのです。一応道路側にはアカメモチがぐるりと植えてありますが、その外側に、定番のモクレン、コブシ、ハナミズキ、サルスベリ、ケヤキ、シャリンバイ、ヤマモモ、などは珍しくないとしても、さらにシデコブシ、マサキ、ヤマザクラ、トネリコ、ヒメシャラ、アラカシ、オガタマノキ、ウメモドキ、タイサンボク、カツラなど、木の高さも枝張りもまちまちに並んでいます。今日は、小さくてまっ白なヒイラギモクセイが咲き始めていました。
西側の植栽の根元には、ランタナやシャスターデージー、ヘメロカリスが咲き乱れます。一見まとまりがないように見えます。ところが四季折々にそれぞれに花が咲き、香り、葉が色づき、実がなるのです。
私は現在、どちらかといえば健康ですから、J市民病院に行く用事がありません。でも、あの植栽を見たいので、遠回りします。歩いたり、自転車を押したり、とにかくゆっくり見て回ります。思いがけない実や花を発見したときはだれかに話したいくらいうれしくなります。花も木もいろいろあるからいいんですよ、ね。
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