連載エッセイ
「地球を見つめて〜なんちゃって」(36)
かざりえみこ
2006年9月20日
道路ができて、それから
友人に聞きました。
高速道路ができてはみたものの、結果として良かったのか悪かったのか、考えるほどネガティブな方に傾くそうです。以下、彼女の話です。
広い田園地帯を一直線に横切って、ひっきりなしに車が行きますので、まず空気の汚染を上げます。以前には窓ガラスも家の中も今のようにいつでも黒いほこりがたまるとことはありませんでした。最近では気持ちが悪いので、生まれたばかりの孫の衣類を外に乾す気になれません。
遠くの町に出かけるのが、億劫ではなくなりました。少々遠くても平気です。たしかに便利は便利ですが、これが幸せとはちがいました。大きなホームセンターや、スーパーもできました。地元の農家が作る野菜も、大型の直売所ができて、新鮮な季節の野菜がいつでも手に入ります。
それにともなって、田んぼがどんどん住宅地に変わりました。一面に黄金の稲穂が揺れていたところに、赤や緑の屋根が建ち並びました。小川は埋められ、竹藪も消えました。
一見、こぎれいな家が建ち並ぶと、こんどは村の古びた家が急に汚く見えてくるのです。朽ちた板塀、こぼれた土壁、裏口に見える古い農機具などが、限りなくみすぼらしく映るのです。
もともとの古い集落の人なら知っているけれど、家と家の間には、それほど親しくない間柄なら通るのを遠慮する、という私道や路地があるものですが、そんなところをとんでもない時に、知らない人が通ることの気持ち悪さ、落ち着かなさ。これってわかりますか?通れるから通る、通っても良いというもの
ではないのです。そして、敷地内の予想もしないところに、たとえば農家なら、敷地内にいくつもの棟があるのですが、その物陰から人がひょっこり出てきたら、驚きますよ。まして焚き火なんかしてたら、怖いです。
それから、ゴミ。
車の窓から捨てるんでしょうね。
畑の端から空き缶やペットボトル、弁当ガラ、汚物などが出てくるとイヤですね。大きなビールの空き缶なんか、あれは、運転しながら飲むんでしょうか? それから、捨て犬・捨て猫。痩せた子猫などかわいそうでも、飼うわけにはいきません。国道沿いに、野良犬や野良猫が増える一方です。ヘンなところに住みついて、困ったものです。
バブル期の前に、大金と田んぼと交換した人が、今でもお金持ちのままかというとそうではありません。カネを使い果たしてしまって。そうして当時、自分の田んぼは区画整理にかからなくて、身の不運を嘆いた人が、今ごろ宅地に売れて、大金持ちです。
ビュンビュン車が行く、この高速道路が、わずかの間に町の何から何まで変えてしまいました。落ち着いて考えてみると、良かったのか悪かったのかわかりません。
「地球を見つめて〜なんちゃって」目次
|