連載エッセイ
「地球を見つめて〜なんちゃって」(31)
かざりえみこ
2006年4月20日
ひとつの「格差」について
最近、「格差」ということばをよく見聞きします。
賃金格差、学歴格差、所得格差……。いろいろな格差の中でも、私は「住んでいる環境の格差」がとても気になります。
人口の多い都市に住む多くの人と、自然が豊富にある地域に住む人たちとの感覚の格差には、すこし大げさですが私は「危機感」のようなものを感じています。とくに第1次産業に携わる人たちが多い地域と第3次産業に関わる人たちが多い都市部の子どもたちの間の「格差」は放置していたらますます大変なことになりそうです。
山が近いところに生活する子どもたちには、「おじいさんは山にシバ刈りに」といえば、燃料にするたきぎを得るために山に行ったことは、まだ暗黙に了解できる範囲でしょう。ところが、都会の保育園の子どもたちはもう何年も前から、「シバカリ」とは「機械で芝生を刈ること」と思っているのです。
またペットブームを目で見ているせいか、絵本などに出て来るヘビを、小さくてかわいいと言います。でも私は「小さくても、マムシというコワイ毒蛇がいるから、手を出したらいけない」ことを真っ先に伝えるようにしています。
先日、山間部のある町に行ってきました。以前に学童保育の子どもたちと来たことを思い出しました。山あいに、あまり広くない田んぼにさしかかったとき、大阪から来た子どもたちは、オタマジャクシを見つけて、いきなり数人が田んぼの中に入りました。私は大きな声でやめさせようとしました。ところが目を輝かせた子どもたちには、もうそんな声は耳に届きません。
農家の人が大事に育てている苗だから……、田んぼからはお米がとれるから……、苗を踏みつぶしたら困るから……、と。
子どもたちから反論の声がわき上がりました。「こんなにたくさん植えてあるんだから、ちょっとぐらい踏んでも大丈夫」「ぼくらには、こんな田んぼよりオタマジャクシの方が大事だ」 私は、子どもたちが家庭で教えられる機会がないことを理解しました。最後には農家の人たちが悲しむから、怒るから、きみたちが怒鳴られるから、と脅し戦法でした。
農村の子どもたちは、エレベーターで家に帰っていくなんて想像できないと言いました。「格差」解消の一助として、子どもたちの国内交換留学がさかんになればいいなーと思う次第です。とくにこの夏休みに向けてどうでしょう?
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