連載エッセイ
「地球を見つめて〜なんちゃって」(20)
かざりえみこ
2005年5月20日
園芸店から逃げ出した草たち
初夏、五月、過ごしやすくていい季節です。木にも草にも勢いがあり、新緑や花が美しいですね。昆虫たちの動きも活発で、アゲハチョウの小さな卵が数日で孵化。すごい食欲を見せてくれます。動物たちもベビーラッシュ。奈良公園の鹿の赤ちゃん、かわいくって見あきません。 いのちがあふれる季節はいいものです。 私は動物よりも植物が好きなので、どうしても草木に目が向いてしまいます。去年はこのあたりにあの草が、あの花があったはずと、記憶をたどって歩いてみます。
ところで、今春ほどめずらしい植物を見たことはありません。たしか、数年前に園芸店で見たはずの植物が思いがけないところに自生していたり、まったく見たことのない草がきれいな花を付けていたり……。いまや世界中を歩くのは、人間やモノや情報だけではない、草も木も歩いているんだ、とつくづく思います。ここ数年の、とくに昨夏の、猛暑のせいでしょうか?
植物レッドデータブックというのがあります。絶滅の危機に瀕している植物について、色々なことを知ることができます。絶滅の危機に至った理由は、河川開発、道路工事、土地造成、森林伐採、園芸採取など、ほとんど人間の活動によるものです。
以前からあった種が、絶滅しようかという危機的状況にあるというのに、そのすきに乗じて子孫繁栄しているのがとくに今まで日本になかった種類です。その強いことと言ったら、感心します。植木鉢からこぼれてでも、野生化して広がるのです。捨てた土からも。濃いピンクや黄色のオキザリス、オレンジ色のポピー、西洋カラシナなどもそうですね。最近、郊外を歩いていて、そこら一面のコバン麦にはびっくりしました。今までそのあたりにはクローバーがあったそうです。
でも、クローバーは、明治期に日本に来た外来種です。シロツメクサ。漢字で書けば白詰め草。乾燥して輸入梱包のパッキン素材に使われたモノだそうです。用済みでそのあたりに捨てられたのが広まったのでしょうか。牧草として栽培されたのもあるそうです。要するに、在来種が弱かったということで、悲しいけれど、これからも負け組が出続けることでしょう。
地球の温暖化と合わせて、何十年、何百年後には、いまの私たちには想像もつかない自然の姿になるのでしょうか。急速に自然が遷移するのを見るのは辛いものですね。
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