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 連載エッセイ
 「地球を見つめて〜なんちゃって」
(16)
                                かざりえみこ

                                   2005年1月20日

正月のトリ


 今年は酉年で年賀状にはニワトリの絵の多かった。「酉」と言えばニワトリのことなのだろうか?「鶏」と書いて「とり」と読み、ニワトリの呼び名であることは子どもの時から知っている。そこでこの年になって初めて「酉」を広辞苑で調べてみた。

とり【酉】
(1) 12支の第10番目。
  (2)  西の方角 →方位
  (3)  昔の時刻の名。今の午後6時ごろ。またその前後約2時間。
→時(とき)というわけで、どこにもニワトリとは書いてない。
 酉年だからと「ニワトリ」にこだわらなくても良いのかもしれない。そう思うと酉年生まれではないけれどもなんだか気分が楽になる。

 朝6時。遮光カーテンの向こうがどれくらい暗いか明るいかわからないが、窓の外からスズメの声が聞こえる。あの声は1羽か2羽。しばらくは静かなさえずり。7時前。玄関の外から今度はおしゃべりなさえずりが聞こえる。スズメたちがしめ飾りの稲穂をついばんでいるのだ。2日だから朝刊はない。だから玄関を開けることもない。ずいぶん前から、正月のスズメは「千客万来」に通じて縁起が良いと思うことにしている。散らばった籾殻くらい、掃除したらいいことだ。
 
 公園で、朝日が当たる一カ所に集まって鳩たちはじっとしている。カラスが木の枝でやたらに鳴く。近所のスーパーや商店街の食べ物屋はまだ休みだからエサがないのだろう。昼過ぎ、年賀葉書を手に外へ出る。カラスの声がにぎやかだ。少し行くと線路の上をカラスが数羽歩いている。他にも数羽電線にとまってにぎやかに鳴き交わす。よく目をこらすと、線路の中の1羽がレールの上に置いた鳩を食べている。嘴太(はしぶと)の名前の通り太いクチバシで、羽を広げた鳩の腹の辺りから赤い肉を見せながら、ひと口突くたびにあたりを伺う。周りのカラスたちはただうるさく鳴くだけ。そこへ電車が接近してくる。あと50メートルもない、と思った瞬間、食事中のカラスはごちそうの鳩をくわえて飛び立った。実に素早い。そして悠然と電柱の上からあたりを睨む。
 
 ポストに投函をしてついでに運動不足解消のため、町を一周して再び先ほどの線路に戻ってきた。原形をとどめた鳩の翼だけがレールの横に見える。カラスはもういない。陽の光で薄紅を帯びた青色にも灰色にも見える鳩の羽根をフ
ェンス越しに、酉年の弱肉強食現場でしばらく物思いにふけった。


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