連載エッセイ
「地球を見つめて〜なんちゃって」(15)
かざりえみこ
2004年12月20日
どんぐり
この秋、クマが里に出てきて大きな被害をもたらしましたが、さて、12月もこの頃になると、もう穴にもぐって冬眠をしているのでしょうか、とんとクマの話を聞かなくなりました。
なぜ奥山に住むはずのクマが里に出てきたかというと、今年は夏の猛暑と秋の相次ぐ台風で山にエサがなくなったからだといわれました。とくに栗、ドングリ類の不作は明らかなようでした。そこで、クマさんかわいそうーとばかり、クマにドングリを送ろうのキャンペーンが展開され、あっという間に何トンだかのドングリが集まったというニュースも目にしました。
これに対して、そんなことをしてもクマの口には入らない、そこに他の動物を呼び集めてしまって生態系をこわすばかりだと激怒した人たちもいました。 なぜなら、クマは落ちているエサを拾っては食べないからだそうです。ネズミやリスなどの小動物の仲間や鳥たちはドングリを拾うと巣穴に貯め込みますが、なおもエサがあれば採集し続けて、山の斜面などに小さな穴を掘ってせっせと隠すのだそうです。これが春になって芽を出し、思いがけないところに思いがけないドングリ育つことになってしまうというのです。
本当にクマや他の野生動物たちがかわいそうと思うなら、彼らが住んでいるはずの奥地開発を止めなければいけないし、また里山の荒廃を食い止めなければいけません。さらに里山に続く田畑の休耕をストップしなければいけないのです。なぜなら今まで人手が入っていたところが、ひとたび耕作が放棄されるとあとは荒れる一方で、木が生え草が生えて山とひと続きになってしまうからです。そうなってから、クマに出てくるな、でたら殺す。これではクマだって辛いでしょう。ドングリ云々のレベルではないのです。今ごろどんな夢を見ていることやら、ねえ、クマさん。
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