連載エッセイ
「地球を見つめて〜なんちゃって」(13)
かざりえみこ
2004年10月20日
塩害の樹木
今年は台風の当たり年。大変な被害の報道に接するたびに、この怒りや悲しみをどこに持って行けばいいのかと、天気図をにらみながら考え込んでしまいます。
この9月に、大阪から寝台特急列車に乗って秋田まで行きました。なだらかな海岸線に沿って北上するうちに夜が明けました。薄明かりの中で海岸沿いの木々を見て驚きました。 「塩害」という言葉を聞いてはいましたが、まだ9月というのに、緑に見えるのは松の木ばかり。広葉樹は、はだか木同然! わずかに残った葉や樹形を見て、栗、柿、サクラがわかります。海側はみごとに1枚も葉がなく、山側にはわずかに残ったかな、という木々も多く目に付きました。 さらに明るくなるに連れ、山側に向いた木には新芽が見えてきました。間もなく大陸から冷たい北西風が吹く季節がやってくるというのに新芽はないでしょう。さらに北に行って、サクラの木に数輪の白い花が咲いているのを何本も目にしました。
野原のススキが一面に葉も穂も枯れて真冬の様相のところもありました。水田は収穫を前に倒伏し、刈り入れの形跡があるところでも、田んぼの中に刈らずに捨てられたのでしょうか、灰白色のイネが立っていました。ビニールハウスを取り去ったあとの土が生々しく、列車の窓から見えない場所の被害も
容易に想像することができました。
海水を運ぶ風の吹くにまかせて、人間はただ見ているしかなかったのです。B寝台の固いベッド兼座席にじーっと座ったまま、外の景色を見つめるのにこんなに疲れたこともありません。地球が壊れかけてきているのではないか、などという人の顔を思い出しながら、都会では見えなかったことを深く考えさせられた旅でした。
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