連載エッセイ
「地球を見つめて〜なんちゃって」(12)
かざりえみこ
2004年9月20日
時の流れとともに
夏の暑さにバテ気味だった道ばたの草たちにも、ようやくひと息がつける季節がやって来ました。雨が少なく暑い日々、足早に通り過ぎるだけの道。ゆっくり草たちと対話なんかしているゆとりがありませんでした。少し涼しくなってみて、改めてあの亜熱帯のような気候は、植物たちにもずいぶんと過酷だっ
たことがわかります。
ところが、くたびれ顔の草の中で涼しげにはびこっている草があるんですね。よく見ればここ数年でようやくなじみになった新顔。去年よりも大株になり勢いを増しているんです。もっとも、オオブタクサにお株を奪われたようなセイタカアワダチソウだって、ほんの3、40年前は新顔の外来種で猛威を振るって嫌われ者だったんですけどね。
よく見ると草の中に、ランタナがきれいな色に咲いています。花かんざしのように小さな花のかたまりを摘もうと、差し入れた手を鋭いトゲにひっかかれたと怒っている友人がいます。草のような顔をしていても、本当は鋭いトゲを持つ木なのです。少し前までは珍しい園芸種でした。
鉢植えが不要になった人の捨てた土から増えていったのでしょう。少々水や肥料が無くても育つようです。種子がこぼれても育つし、枝が地面を這いながら根を張っていきます。工場のフェンスには、野生化した朝顔が9月半ばというのに昼間も咲いていました。
池や河で外来種のブルーギルやブラックバスが、在来種の鯉や鮒を駆逐してしまうのと同じ現象が、身の回りの草原で、たとえば、町の中よりも河川敷などでよく見られます。春の西洋カラシナを思い起こしてみて下さい。
多くの人がクローバーと呼んで親しんでいるシロツメクサだって、ほんとうは明治のはじめに西洋からの輸入品のパッキングに使われて日本に来たと言われています。そのあたりに捨てたものから殖えたんですね。名前の「ツメクサ」は、つまり詰め草。江戸時代の野原には生えてなかった……。植物図鑑を見ていると、中国原産、ヨーロッパ原産とある野草の多いことには驚きます。
外来種の繁殖は今に始まったことでもないし、騒ぎ立てることでもないか! 時の流れとともに植物界のグローバライゼーション! なーんちゃって。
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