連載エッセイ
「地球を見つめて〜なんちゃって」(10)
かざりえみこ
2004年7月20日
育て! アボカドくん
もう20年がたつかも知れません。
アボカドの種を植えました。
森のバターといわれ、数ある果物の中でいちばん栄養価が高いのがこのアボカドだそうです。 とろりとしておいしいし、食べたあとの種も立派です。トロピカルフルーツについて書かれた本を借りてきて、その通りにやってみました。種は、土に置くようにするだけでいいとか。芽が出たと思ったら、もう、その育つのが速いこと!
鉢を大きくしながら、3年ほどは我が家で育てたのですが、どんどん育ってあまりにかわいそう。裏の公園の端に植えさせてもらいました。棒を立て、紐で結び、水を運び、肥料もやりました。広いところで日に当たってうれしそうでした。
大人の掌のような大きな葉っぱを豊かに繁らせ、虫も付かず、青々とみごとな木に育ちました。 冬の寒さがこたえるのか、葉は霜にやけて落ちるのですが、また春が来ると芽を出します。5年、10年とたち、木も3メートルくらいになりました。ところがある年に、市の公園管理の人たちが来て、他の木と同様、すっきりと裸ん坊にしてしまいました。そろそろ実のなるころかなと、近所の人たちと楽しみにしていた矢先です。
でも、個人の土地ならぬ公園です。あまり大きなことも言えずにがまんしました。幹だけになった木から夏の間にまた枝が出た次の春先に、私は木に札を下げました。「実のなる珍しいアボカドの木です。どうか枝を切らないでください」と書いて。 また切られました。
それどころか、公園管理の人にたいへん叱られました。「植えさせてやってるのに、こんな指図をされては実に困る」と。私は実を収穫して利益を上げようとしているのではありません。こうして育つのだから、どうせなら実をならせて、みんなで見て楽しもうと思っただけでした。
図鑑によると冬の間に花芽が形成されるそうです。しかしこのアボカドくんにはここ数年、花芽がついているかも知れない枝が落とされて、春になるたびに一からやり直しです。いま、この暑さの中で日々にいっぱいに大きな葉を茂らせています。
がんばれ、アボカドくん!!
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