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   「先生、10って暗いの?」〜外国から来た子どもを地域で支える〜

 私たちは、外国から来た人(おとなも子どもも)の日本語学習のお手伝いをしているボランティアグループです。今いちばん気になっているのは、日本語がかなり話せるけれど、勉強のことばになるとわからない小学校低学年の子どもたちのことです。

 子どもは、当初、日本語がまったくわからなくても、毎日学校で先生やクラスメイトと接していると1年ほどでかなり会話ができるようになります。来日した年齢が低ければ低いほど早く日本語に慣れて、2、3年もたつと、もう日本の子どもと同じように見えます。けれども、知っていることばの数はそれほど多くありません。  
 保護者があまり日本語ができない場合、家庭で使われる日本語は限られています。日本の文化習慣に関することばや学習特有のことば、抽象的なことばなどに触れる機会はほとんどありません。それで、教科書や先生の授業の意味がわからず、学習についていけないことがあります。

 例えば、ある子どもはテストで、「母の日に1本200円のカーネーション5本と500円の花びんを買いました。いくらはらいましたか」という問題に答えられませんでした。「母の日」や「カーネーション」の意味がわからなくて、もうこの問題は自分には無理だと思ってしまったと言います。そこで試しに、「1本200円の鉛筆5本と500円の筆箱を買いました。全部でいくらですか」と言い換えてみると、ちゃんと答えられます。この子は算数がわからないのではなく、「ことば」でつまずいているのです。
  「先生、10って暗いの?」と質問した子もいます。何のことか尋ねると、「だって、学校の先生が『10は暗い』って言ったよ」。持っていたプリントを見ると、「10のくらい(位)のかず(数)はどれですか」とありました。繰り下がりの引き算で「隣から10借りてきて…」という先生の説明に、隣の席の子から借りようとした子もいます。「いっしょ」はわかりますが、「同じ」や「等しい」は日頃耳にすることが少ないのでわかりません。

 わからないことばで新しい事柄を学んでいくのはたいへんです。語彙の不足は、まだ幼い子どもが自分一人で克服できることではありません。しかし、日常的な限られた場面での会話は非常にスムーズにできるので、もう何でもわかっていると思われ、ことばのハンデがあることを理解してもらえません。ひどい場合には、成績が悪いのはちゃんと授業を聞いていないからだとか努力が足りないからだと見なされます。子ども自身も、自分は頭が悪いのだと思って学習意欲をなくしていきます。

 学校の先生や友達に尋ねればいいのにと思いますが、「先生は忙しいから聞かれへんし、友達には『こんなんも、わかれへんのか』と言われるから、嫌や。(ボランティアの)先生やったら、聞きやすいねん」と言っていました。
 「何でも尋ねてね。いっしょに考えよう。応援してるよ」と声をかけ続けていきたいと思っています。

 

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